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2013年9月20日 (金)

スピード・リオン(花にまつわる陰徳の記録)

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スピード・リオンというスポーツカーのような名前を持った花がある。
花の少ない8月下旬から咲き始め、花持ちの良いところから仏花や切り花として人気があり、花屋の店頭でよく見掛けるが、ある人から「なんでこんな奇抜な名前がついたのでしょう」と言われて調べてみた。北アメリカ原産のこの花は、現地では「亀」または」「蛇」の頭に似ると言うので「タートル・ヘッド」とか「スネーク・ヘッド」と呼ばれ、学名もChelone lyonii=ケロネ・リオニーと命名されている。ケネロ=ギリシャ語の「亀」、リオニー=スコットランドの植物学者に因むというから、同じイメージのネーミングである。我が国では一応「ジャコウソウモドキ」と名付けられているが、「これでは売れない」と判断した園芸業者が、ケロネ属では早咲きの種だから、本来は「アーリー・ケロネ」などと呼ぶべきを、語呂の良い「スピード・リオンで売り出すことにしたらしい。

そんな回答をしたら、「ギリシャ語やラテン語など小難しいことを調べるのは大変でしょう」と同情されたが、今は権威ある図鑑・辞典とインターネット検索を併用すれば訳はない。 特に学名については「植物学名大辞典」を入手してから殆ど苦労なしになったが、お世話になっているこの辞典を巡って、大勢の篤志家とそれを支えた方々の隠れたご支援があったことを知ったので、この際ご披露させていただこう。

元国鉄マンで京都在住のサボテン愛好家万谷幸男氏が、世界の植物の学名を編集すると言う大事業を企てて、独力で資料を収集していたが、1984年、志半ばにして癌で逝去された。その遺志を継いだのが尼崎の松居健二郎氏ほか5名の同志の方々である。 資金をカンパし、手弁当で2万5千語の原稿を推敲するのに苦心惨憺して10年の歳月を費やし、やっと出版に漕ぎ付けたのが1995年だったと言う。この大事業を陰で支えたもう一人の篤志家を忘れてはなるまい。 印刷を担当された西村印刷(株)社長西村春一氏である。この事業の精神的な支援者であり、隠れたスポンサーでもあった同氏は、度重なる原稿の改訂にも嫌な顔一つせず、辛抱をかさねて出版に漕ぎ付けられたと言う。

西村氏とは花の友を介して知り合い、たちまち意気投合して以来、花の探訪や同志がお世話をなさっている城南宮の源氏物語保存会のプロジェクトに参加させていただくなど濃密なお付き合いをさせていただいていたが、この辞典の出版に関わる挿話は、同氏もまた癌で倒れ、夫人から遺品として植物学に関する幾多の資料と共に遺贈を受けて初めて知った、 以来この書は図鑑類と共に座右に置き、片時も離すことのできない一冊として重用させていただいている。

奇しくも、この「スピード・リオン」の学名を検索した9月18日は、同氏の3回忌の命日にあたる。こんな北米の辺境の地味な野草まで検索できる「植物学名大辞典」の有用性と、それを完成させていただいた西村春一氏始め、これに関わっていただいた幾多の方々の陰徳をご報告させていただくため、筆をとった次第である。


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2013年9月19日 (木)

キハギ(万葉時代はハギが人気№1だった)

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万葉時代の人気№1の花は「ハギ」だったと言えば驚かれる方もあるだろうが、その方面の権威中尾佐助博士は著書「花と木の文化史」で、万葉集に詠われた花の頻度は、
  ① ハギ 138 ② ウメ 118 ③ 松 81 ④ 藻 74  ⑤ タチバナ 60 
  ハギの頻度は141・142とする資料もある
外来のウメを除けば、ハギとタチバナだけと言うのがちょっと寂しい。人気№1のハギにしても、飛鳥の地で見られるのは、ヤマハギ・マルバハギとこのキハギなど里山に咲く比較的おとなしい品種ばかりで、花の大きいケハギは日本海側に分布し、ケハギの園芸品種といわれるミヤギノハギはまだなかった筈なので、春の「観梅」となならんで、秋の花見と称された「萩狩り」も、随分地味な行事だったのではないだろうか。

蛇足かも知れないが、国語教師から「萩は峠などと同様に日本人が作り出した和製漢字の傑作で、日本人の感性の豊かさを示す好事例だ・・・」と聞かされていたのに、後日、「萩」は中国にあって「ヨモギ」を指し、ハギは「胡枝子」と表記すると知ってガッカリしたが、いま、こうして並べてみると「萩=ヨモギ」・「ハギ=胡枝子」よりも、「ハギ=萩」の方が感覚的にピッタリク来るように思える。
「青は藍より出て、藍より青い」の諺通り、日本人の繊細な感覚の方が一枚上と主張すれば、本家の中国は「盗人猛々しい」を反発して国際紛争の火種になりかねないので、この辺りでやめて置こう。 

私見だが、、華やかなミヤギノハギよりも、このキハギの方が余程好ましい。一見地味に思えるが、白地に赤紫色の斑がハッとするほど新鮮で、江戸前の小粋さとでも言おうか、浴衣の柄などにデザインすれば引き立つに違いないと密かに期待している。  どなたか手を染めて見ませんか。
 


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2013年9月16日 (月)

コミカンソウ・キダチミカンソウ(気になるコミカンソウ属の動向)

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目立つ花が少ない晩夏の観察会で、この草に出会うと「ホッ」とする。「ご覧ください。オジギソウにそっくりですね」「オジギソウと同じで、夕方になると葉を畳んで眠りますが、マメ科の植物ではありません」「それが証拠に葉を裏返して見ると、アラアラ…、橙色の小さなミカンそっくりの実が並んでいますね」「コミカンソウと言います」。これだけの演出で、観察会の雰囲気が和らぐから嬉しい。

ところが、シンガポール植物園で同じような説明をするガイドに出会って驚かされた。1989年京都商工会議所の東南アジア視察団に加えていただき、植物園を訪ねたとき、偶々出会ったのが中国系で日本留学が長かったという若いガイドさんだった。 山野草が好きという私を案内してくれたのは薬草園で、そこに生えているコミカンソウとよく似た野草を指して「ストーンブレーカー」ですと前置きして解説してくれた内容が私とそっくりで、最後の「葉を裏返すと、アラアラ、青いアップルが並んでいますね」と言うセリフだけが変わっているので思わず吹き出してしまった。この「ストーンブレーカー(和名をコダチミカンソウと言う)」は、石畳を割って生えるほどの生命力を持ち世界中に帰化しているが、現地では「マレーシアのハーブ」、中国では「小反魂」、インドのアーユルベーダ―では「プミアマラキー」と呼ぶ薬草で、黄疸・肝炎・胆石・腎臓結石ほかあらゆる内臓疾患とそれに伴う疼痛を押さえる効用があり、特にB型肝炎の治療効果が発見され世界が注目している薬草だと言う。

そんな経緯があって、コミカンソウ科コミカンソウ属の仲間をを調べてみると約1800種あり、インド洋周辺から世界中に勢力を拡大しつつあると言うのに、我が国には歴史以前に東南アジアから渡来したとされているコミカンソウ・ヒメミカンソウの2種のみで、その後ブラジルコミカンソウ(別名ナガエコミカンソウ)が都市部に定住しているだけで、気になるコダチコミカンソウが沖縄に留まって、未だ本州に上陸えあ果たしていないらしい。

「いや、もう渡来しているよ」と言う情報もあるらしい。 若し確認できたら、是非ご一報ください。

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