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2013年11月30日 (土)

ヒイラギ(「柊」と言う素晴らしい漢字)

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初冬の今頃、「目に付く花は・・・」と問われれば、「サザンカ」と答えるが、「好きな花は・・・」と聞かれれば、ヒイラギ・チャノキ・ヤツデ・ビワなどが心に浮かぶ。寒風の下、凛とした佇まいを見せて咲く白い小花は、それぞれに風情があって好ましいが、中でも、ヒイラギは、濃い緑の葉と葉の間から覗く純白の花との対比が素晴らしく、私としてはイの一番に推したい花である。 俳味も抜群と思い俳句歳時記(平凡社版)を繰ってみたが、案に相違して突出した名句が見当たらないのでがっかりさせられた。 その中では、
  柊の葉の間より花こぼれ     高浜虚子
  柊の数えようなき花の数     横山迪子
  柊の花香や咲きし日を知らず  大橋伊佐子
  柊の花の終れは知らぬまま   稲畑汀子
がヒイラギの生態をよく表しているように思えるので選んでみた。

もう一つ、「柊」という漢字が素晴らしい。
その由来を調べて見たが、ヒイラギ自体が日本と台湾だけに分布していることもあって、中国には「柊」に該当する木はないらしい。古事記には「比々羅木」の名で出てくるし、平安時代には、既に厄や穢れを払う木とされていたと言うから、その時代に中国の文献から「柊」の字を見付けて、ヒイラギの表記に借用したのではないかと思われる。「椿」も中国ではチャンチンと言う木に使われていたのに、強引にツバキに流用した手口に似ているが、「柊」「椿」ともに、これしかないと思えるほどの素晴らしい漢字表記である。

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2013年11月15日 (金)

オグラセンノウ(希少植物探訪記)

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オグラセンノウは絶滅危惧種(EN)に指定されているが、町で見るのはそんなに難しくはない。江戸時代以来好事家によって栽培されており、今でもインターネットで検索すれば、1株500円程度で容易に手に入れることが出来る。しかし野生種を探すのは並大抵ではない。 元来、日本が大陸と陸続きだった頃、東アジアに広く分布していたが、日本海によって隔てられたのちは、九州と中国地方の山間部の湿原で生き残ってるものの、生育地の環境の変化で生息数を大幅に減らしていると聞く。
私も一時期希少植物の探訪に血の道を挙げ、この花もターゲットの一つに選んでかなり真剣に追掛けて来たが、努力の割に成果は少なかった。 その経緯を略記すると、
① 熊本県阿蘇高原・・・花時に2回探訪  ××
② 大分県九重高原・・・坊がつる湿原など丹念に歩いたが ×
③ 広島県神石郡・比婆郡帝釈中国山脈の湿原)・・・ 未探訪
④ 岡山県新見市鯉ヶ窪湿原・・・3回訪ねて2回花に出会う 〇〇
⑤ 兵庫県赤穂郡の山間部・・・7年に亘り意欲的に探したが ×
⑥ 大阪府能勢町歌垣山内・・・周辺を丹念に歩いたが  ×
(注)⑤近くの佐用町に拠点を設営し7年間探したが発見できず
   ⑥1990年版大阪府植物目録に「1987年の土木工事により絶滅」とある
オグラセンオウの名は京都の小倉山に因むと言うし、岡山県の山間部の集落では盆花にしていたと言う記録もあるので、昔はかなり広範囲に分布していたらしい。
その日本の山野草切っての名花が無惨に衰退して行くのを見るのはなんとも辛い。

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2013年11月14日 (木)

ハナノキ(木と友達になりましょう)

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観察会などで、花の話をする時に、「木と友達になりましょう」と言い添える事にしています。
友の数は多ければ多いほどいい。
この物言わぬ友は、懐が深くて、こちらが訪ねさえすればいつでも暖かく迎えてくれるところが嬉しい。
「どんな木がよいか」と聞かれれば、「人間の友達選びと同じです」と答えましょう。昔人間の私などは、与謝野鉄幹の歌を思い出して、
「妻を娶らば才たけて、見目麗しく情あり、友を選ばば書を読みて、六分の侠気四分の熱」と言いたいところだが、いかにも古過ぎる。今の方なら、「フィーリングが合う」とか「空気が読める奴」などと言うことのなるのでしょうか。
私の年来の友をご紹介させていただきます。
名前は「ハナノキ」、幹回り15cmの若木で、自宅から歩いて5分のマンションの小公園の片隅に生えています。園芸業者がウリハダカエデを植える際に間違ったらしく、たった1本だけ肩をすぼめるように立っていますが、国の天然記念物の名木「ハナノキ」に相違ありません。
ここに家を建てて引っ越してきた直後に見付けたので、もう30年を越える付き合いになります。
普段はウリハダカエデに埋もれているこの木が異彩を放つのは紅葉の季節です。日頃目立つことのない地味な少女が、突然真紅のドレスに着かえてプリマドンナ変身し、黄葉するウリハダカエデをバックに、すっくと立つのですから、拍手喝采・・・と言いたいところですが、悲しいかな小公園の片隅では、人は気付くこともなく通り過ぎてしまいます。 だから、せめてもの友達甲斐に、この孤独な友の晴れ姿をカメラに収めることにしています。


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2013年11月13日 (水)

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2013年11月 2日 (土)

キバナオドリコソウ(日欧の花の悪名比較)

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日本にも、聞くにたえないような悪名を持つ花がある。
 シビトバナ(死人花)・テクサレ(手腐れ) ヒガンバナの俗名
 ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)
 ヘクソカズラ(屁糞かずら)
が、三大悪名と言えるだろうが、ヨーロッパにも、これらに優るとも劣らない凄い名前を持つ野草があることを知ったので、報告させていただこう。 上の写真で見る通りの可憐なキバナオドリコソウ(学名:ラミウム・ガレオブドロン)である。 我が国のオドリコソウの近縁種で、渡来しているのは黄花の「ガレオブドロン」とピンクの花を咲かせる「マクラータ」の2種で、我が国の風土にもよく馴染み、暑さ寒さにも強いので、欧風花壇のグランドカバーとして重用されているらしい。
しかし、その名前が凄い。
学名は Lamium galeobdolon だが、ラミウムのLamiaは人を喰うと言う伝説上の怪物で、ガレオブドロンを直訳すれば「イタチの臭い」で、「イタチの最後っ屁に似た悪臭を持つ怪物」ともなれば、ヘクソカズラなどものの数ではない。 英名は Dead nettle は「死人草」でヒガンバナの俗名そっくりである。
なぜこんなに忌み嫌われるのだろうか。 
我が国では「可愛い踊り子」と見る花が、ヨーロッパでは「異形の者(怪物)」に見え、葉の斑や固有の匂いも不気味に思えるらしい。 日本で茶花として人気のあるホトトギスの花の斑が欧米人には蝦蟇ガエルの肌に見えて Toed lillies と呼ぶのと同じらしいが、いずれも感性の問題であって、是非を云々することはできない。

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