ヒイラギ(「柊」と言う素晴らしい漢字)
初冬の今頃、「目に付く花は・・・」と問われれば、「サザンカ」と答えるが、「好きな花は・・・」と聞かれれば、ヒイラギ・チャノキ・ヤツデ・ビワなどが心に浮かぶ。寒風の下、凛とした佇まいを見せて咲く白い小花は、それぞれに風情があって好ましいが、中でも、ヒイラギは、濃い緑の葉と葉の間から覗く純白の花との対比が素晴らしく、私としてはイの一番に推したい花である。 俳味も抜群と思い俳句歳時記(平凡社版)を繰ってみたが、案に相違して突出した名句が見当たらないのでがっかりさせられた。 その中では、
柊の葉の間より花こぼれ 高浜虚子
柊の数えようなき花の数 横山迪子
柊の花香や咲きし日を知らず 大橋伊佐子
柊の花の終れは知らぬまま 稲畑汀子
がヒイラギの生態をよく表しているように思えるので選んでみた。
もう一つ、「柊」という漢字が素晴らしい。
その由来を調べて見たが、ヒイラギ自体が日本と台湾だけに分布していることもあって、中国には「柊」に該当する木はないらしい。古事記には「比々羅木」の名で出てくるし、平安時代には、既に厄や穢れを払う木とされていたと言うから、その時代に中国の文献から「柊」の字を見付けて、ヒイラギの表記に借用したのではないかと思われる。「椿」も中国ではチャンチンと言う木に使われていたのに、強引にツバキに流用した手口に似ているが、「柊」「椿」ともに、これしかないと思えるほどの素晴らしい漢字表記である。
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