アキノエノコログサ(気になるエノコログサ属の盛衰)
アキノエノコログサの花穂が目立つ。
クローズアップレンズで覗いて見ると、花穂の禾(のぎ)が輝いて息を飲むほど美しい。
かしこまってエノコログサと呼ぶよりは、幼い頃から呼び習わした「猫じゃらし」の方が親しみを感じる身近な雑草で、可愛い花穂に惹かれて、通り掛かりに摘み採って帰り、一輪挿しに投げ入れて楽しんだ方も多いのではないだろうか。悪童の頃に、ちょっと気になる女の子の後ろから忍び寄り、うなじ辺りをコチョコチョとくすぐって、悲鳴を挙げさせた甘酸っぱい思い出もある。
このエノコログサ属には色々な品種がある。花穂を真っ直ぐに立てるのが普通のエノコログサで、花穂が紫色のムラサキエノコログサ、夕日を浴びると禾(のぎ)が黄金色に輝くキンエノコログサ、これらより一回り大きくて長い花穂が垂れるアキノエノコログサである。これらは田畑やその周辺、都会の空き地などに平和に棲み分けているかに見えたが、20~30年前から一寸した異変が生じた。東南アジアの出自で、史前帰化植物として我が国に定住したと言われているアキノエノコログサが均衡を破って徐々に勢力を拡大し始めたのである。
エノコログサの衰退とアキノエノコログサの勢力拡大を最初に気付かれたのは、長い間大本教花明山植物園長をつとめられた津軽俊介氏ではないかと思う。当時、文献を拝見して、京都の植物界の権威の目が、こんなありふれた雑草にまで注がれていることに感激したことを思い出す。
アキノエノコログサは地球規模の温暖化に後押しされて、見る見るうちに勢力を拡大し、今やエノコログサ属の中で一党支配体制を築きつつあるように思える。
最近の新聞紙上で「ことごとに勝たせ過ぎたと反省し」と言う川柳を見付けて、我が意を得た思いがしたが、人間の世界であれ、植物の世界であれ、一党支配は好ましくはない。
草いろいろおのおの花の手柄かな 芭蕉
そんな世界であって欲しい。
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