クズ(植物界のエイリアン)
秋の七草として慣れ親しんできたクズだが、国内の伐採地・里山の林縁・都会の空き地・道路の路肩など、所構わず繁殖するばかりか、アメリカ合衆国始め海外の各地に進出するに及んで、とうとう国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来生物ワースト100」の植物部門の指定されたと言う。言うならば、国際指名手配の犯人扱いされてしまったと言う訳である。その猛烈な繁殖力から「植物界のエイリアン」と言われるクズの生態を見直してみよう。
春の目覚めは比較的遅く、平均気温が9~10℃にならないと芽が動かないとされているのに、いったん成長を開始すれば、蔓の先端は1日に0・5~1mは伸びるといわれ、盛んに分枝を繰り返して広大な面積を占拠するかりか、木の枝に絡まって垂直にも伸び、樹高10mを越す木を覆い、広い葉を広げて他の植物を駆除してしまう。 その成長の秘密は「葛根」と言われる長さ2m、太さ20cmに及ぶ地下の塊根にあるらしい。
一般の植物は、芽を出して、茎葉を伸ばし、栄養分を再投資しながら成長するが、クズはそんな悠長なことをしない。 前年度に塊根に溜め込んでいた豊富な栄養分を全部翌年の成長に振り向けるというから恐ろしい。
クズの茎葉に比べて、花と果実に振り向ける栄養分の比率が極端に少ないことにも注目しよう。その上、若い株は花を咲かせず、生産したエネルギーの全部を脇目も振らず茎葉の成長に投資する。
クズは、真夏に一旦成長を中止するばかりか、葉をたたんで水分の蒸発を防ぐ。(古来から歌に詠まれた「裏見草はクズの別名である)我が国の夏草の大部分は真夏までに成長をやめるが、クズはあきらめない。秋の雨に遭う頃からクズは再び成長を開始し、2段ロケットのように茎葉を広げ、今度は一転して光合成した栄養分を地下の塊根に貯め込むことに専念するのでる。 このライフサイクルを観察したアメリカの学者が、「クズは成長と己のシェアー拡大以外は眼中にない植物である」と評したと言うが、それはバブル期以前の日本の商社に冠せられた言葉とそっくりではなかったかしら・・・。
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