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2012年9月12日 (水)

クズ(心に残るクズの詩歌)

Kuzu
万葉集で山上憶良が「秋の七草」として読み込んで以来、クズは古今の歌人・俳人に詠みつがれてきたが、近代の白眉と言えるのが、釈超空(折口信夫)のこの歌ではないだろうか。
   葛の花踏みしだかれて色あたらし 
             この山道を行きし人あり
クズの花の歌で、これを超える歌を知らない。
壱岐島で詠まれ、「踏みしだかれて、色あたらし」と言うあたりには、作者の妖艶な情念が秘かに込められているとする評論家もあるらしいが、そんなことをあれこれ詮索せずとも、素直に読んで、人それぞれに、自分なりの情景を心に描くことのできる絶唱と言えるのではないだろうか。 この歌を知った時に、何気なく「飛鳥の秋」を連想し、山の辺の道こそ相応しいと思ったが、後日、その道を歩き、崇神天皇陵の傍らから左に逸れて竜王山の登山口に入ったあたりで、思い描いた情景の通り、クズが咲き乱れており、風に吹き散らされた花が、先に歩いた登山者に踏みしだかれている情景に出会い、白昼夢のようで、戦慄を覚えたことがある。
クズは、真夏に水分の蒸発を防ぐために日中に葉を畳むことがあり、また秋の風に吹かれて一斉に白い葉の裏を見せることがあるので、「裏見草」の別名を持つ。 裏見=恨みに通じることから生まれた「芦屋堂満大内鑑」の「恨み葛の葉」の伝承と歌を知らぬ人はあるまいが、数々の歌・俳句の中から初秋の風情を伝えてくれる   
   葛の風 吹き返したる裏葉かな  高浜虚子
が、クズの生態をを活写した爽やかな句として、心に残っている。
昨日のとし爺さんの花便り「クズ(植物界のエイリアン説)」で、クズに悪口雑言を浴びせた罪滅ぼしと、その口直しに、心に残るクズの詩歌を披露させていただきました。
   


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