« 2012年7月 | トップページ | 2012年10月 »

2012年9月12日 (水)

クズ(心に残るクズの詩歌)

Kuzu
万葉集で山上憶良が「秋の七草」として読み込んで以来、クズは古今の歌人・俳人に詠みつがれてきたが、近代の白眉と言えるのが、釈超空(折口信夫)のこの歌ではないだろうか。
   葛の花踏みしだかれて色あたらし 
             この山道を行きし人あり
クズの花の歌で、これを超える歌を知らない。
壱岐島で詠まれ、「踏みしだかれて、色あたらし」と言うあたりには、作者の妖艶な情念が秘かに込められているとする評論家もあるらしいが、そんなことをあれこれ詮索せずとも、素直に読んで、人それぞれに、自分なりの情景を心に描くことのできる絶唱と言えるのではないだろうか。 この歌を知った時に、何気なく「飛鳥の秋」を連想し、山の辺の道こそ相応しいと思ったが、後日、その道を歩き、崇神天皇陵の傍らから左に逸れて竜王山の登山口に入ったあたりで、思い描いた情景の通り、クズが咲き乱れており、風に吹き散らされた花が、先に歩いた登山者に踏みしだかれている情景に出会い、白昼夢のようで、戦慄を覚えたことがある。
クズは、真夏に水分の蒸発を防ぐために日中に葉を畳むことがあり、また秋の風に吹かれて一斉に白い葉の裏を見せることがあるので、「裏見草」の別名を持つ。 裏見=恨みに通じることから生まれた「芦屋堂満大内鑑」の「恨み葛の葉」の伝承と歌を知らぬ人はあるまいが、数々の歌・俳句の中から初秋の風情を伝えてくれる   
   葛の風 吹き返したる裏葉かな  高浜虚子
が、クズの生態をを活写した爽やかな句として、心に残っている。
昨日のとし爺さんの花便り「クズ(植物界のエイリアン説)」で、クズに悪口雑言を浴びせた罪滅ぼしと、その口直しに、心に残るクズの詩歌を披露させていただきました。
   


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月11日 (火)

クズ(植物界のエイリアン)

Photo
秋の七草として慣れ親しんできたクズだが、国内の伐採地・里山の林縁・都会の空き地・道路の路肩など、所構わず繁殖するばかりか、アメリカ合衆国始め海外の各地に進出するに及んで、とうとう国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来生物ワースト100」の植物部門の指定されたと言う。言うならば、国際指名手配の犯人扱いされてしまったと言う訳である。その猛烈な繁殖力から「植物界のエイリアン」と言われるクズの生態を見直してみよう。
春の目覚めは比較的遅く、平均気温が9~10℃にならないと芽が動かないとされているのに、いったん成長を開始すれば、蔓の先端は1日に0・5~1mは伸びるといわれ、盛んに分枝を繰り返して広大な面積を占拠するかりか、木の枝に絡まって垂直にも伸び、樹高10mを越す木を覆い、広い葉を広げて他の植物を駆除してしまう。 その成長の秘密は「葛根」と言われる長さ2m、太さ20cmに及ぶ地下の塊根にあるらしい。
一般の植物は、芽を出して、茎葉を伸ばし、栄養分を再投資しながら成長するが、クズはそんな悠長なことをしない。 前年度に塊根に溜め込んでいた豊富な栄養分を全部翌年の成長に振り向けるというから恐ろしい。
クズの茎葉に比べて、花と果実に振り向ける栄養分の比率が極端に少ないことにも注目しよう。その上、若い株は花を咲かせず、生産したエネルギーの全部を脇目も振らず茎葉の成長に投資する。
クズは、真夏に一旦成長を中止するばかりか、葉をたたんで水分の蒸発を防ぐ。(古来から歌に詠まれた「裏見草はクズの別名である)我が国の夏草の大部分は真夏までに成長をやめるが、クズはあきらめない。秋の雨に遭う頃からクズは再び成長を開始し、2段ロケットのように茎葉を広げ、今度は一転して光合成した栄養分を地下の塊根に貯め込むことに専念するのでる。 このライフサイクルを観察したアメリカの学者が、「クズは成長と己のシェアー拡大以外は眼中にない植物である」と評したと言うが、それはバブル期以前の日本の商社に冠せられた言葉とそっくりではなかったかしら・・・。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 6日 (木)

ミズキンバイ(外圧を凌いで生き残れ)

Photo_2
ミズキンバイは絶滅危惧ⅠA(CR)に指定されており、山と渓谷社の「レッドデータ・プランツ」によれば、以前は本州・四国・九州の池沼に広く分布していたが、過度の農薬使用に因る水質汚染で、次々に生息地を負われ、いまでは千葉・神奈川・高知・宮崎の一部にかろうじて生き永らえていると言う。
希少種であるが、万博日本庭園の水生植物コーナーに栽培されていて、毎年美しい花を見せてくれるので、わたしのは親しい花だった。
そんなこともあって、今年の6月20日に琵琶湖東岸烏丸半島の大蓮池の水際でオオバナミズキンバイに出会ったときは、てっきりミズキンバイと思い込んで、ブログに「琵琶湖で蘇えれ・・・」と手放しのエールを送ってしまったが、幸いniko氏からご指摘をいただき、訂正することが出来た。
従来からブログにアップする際には在来の資料に加えて、帰化植物の文献にも目を通して、類似の品種との混同はないかとチェックしているが、オオバナミズキンバイは渡来が確認されたのが2007年、琵琶湖では2009年というから、直近の情報を知らず思い込みを先行させてしまったものである。
それにしても、両者は酷似していて、花を見る限り素人では弁別が難しい。
知り得た資料によれば、外来種は繁殖力旺盛で最初に発見された兵庫県では、すっかり定住しているらしい。
この上は、我がミズキンバイが、外圧を凌いで上手に棲み分け、生き残ることを祈りたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年9月 5日 (水)

オオバナミズキンバイ(植物の同定は難しい)

Photo_2
平成24年6月20日に、琵琶湖の東岸烏丸半島の大蓮池の畔を歩いていて、岸辺に黄金色の花が点々と咲いているのを見付けて直感的に「あっ、ミズキンバイだ」と思い込んだのが失敗の始まりあつた。
万博日本庭園に栽培されていて見慣れていることも思い込みの原因になったようだ。 
近くの草津水生植物園から逃げ出したものかも知れないなどと思いつつも、「絶滅危惧ⅠA(CR)の植物を野生状態で出会ったよ」と同好の士にも語り、このブログでも「ミズキンバイ(琵琶湖で蘇れ・・・)」とぶちあげてしまったのだから汗顔のいたりである。
幸いにもniko氏が「新顔の帰化植物で琵琶湖では、生態系に影響を及ぼす外来植物として駆除する動きが始まっている」とご指摘くださったので、7月25日付けの記事を消去し、顛末をご報告する次第であります。
(niko様有難うございました)
南米から北米南部原産のオオバナミズキンバイの渡来が確認されたのは2007年、琵琶湖では2009年に守山市の赤野井湾で見付かったと言うから、僅か数年尾間に烏丸半島を中心に駆除作業が必要な程の繁殖力を示しており、将来ミズキンバイと雑交するなど生態系を乱す危険性が懸念されている。
それにしても両者は酷似しており、相違点はオオバナミズキンバイの葉の縁に細毛、茎と票脈に軟毛が密生していることくらいで、花は素人目には弁別がつかない。
当分の間、推移を見守ル必要がありそうだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ナヨクサフジ(生物農薬)

Photo
戦後、過度に農薬を使用して環境汚染を招き、生態系を破壊したことへの反省から、その回復に向けて様々な対策が講じられ、テンポは遅いが、着術にその効果があらわれているようなので、心強い。
その流れの中で、環境に優しい「生物農薬」という考えが生まれた。
上に掲げた可愛い花が、その「生物農薬」の一つである。
ヨーロッパ生まれの牧草で、ヘアリーベッチ(直訳=髪の毛エンドウ)、日本名をナヨクサフジ(なよなよした草藤)と言う。 一見弱々しいこの草を畑に種子を播くと、蔓を四方八方に伸ばして一挙に地面をカバーしてしまう。その上、根・葉・茎から他の植物の発育を阻害するアレルギー物質(アレロバシー)を分泌するので、除草の手間が省けると言う。 
更には、
① マメ科植物なので、レンゲソウと同様に根の根粒菌が空中窒素を固定してくれるので立派な緑被となる。
② 一年草なので冬に枯れるが、そのまま「敷き草」となって地面を覆い続ける。
と言う優れものである。 
全国の果樹園などで盛んに植栽されていて、その周辺で野生化が見られるが、行儀のよい草で、栽培された土地の周辺にとどまって、生態系を乱すおそれはないと言う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年7月 | トップページ | 2012年10月 »