ヤマシャクヤク（妖艶な果実と清楚な花）

創造の神は余程大らかな方だったのか、それとも余りにも多忙だったので細部にまで目が届かなかったのか、茎・葉・花・果実などにアンマッチングなデザインが随所に見られますが、このヤマシャクヤクもその一つです。　山でこの毒々しいまでに妖艶な果実に出会っても、それが「山の妖精」・「山の娘」・｢天女の花」などの愛称で人気のある清楚なヤマシャクヤクを思い浮かべられる人は少ないのではないでしょうか。　

仲間の一人が「久し振りに顔をだした同窓会で出会った色っぽい女性が、クラス人気を集めていた清楚な美少女だったと知った時の驚き・・・」と表現しいてたが、やや大げさだとしても、それに近いと思われます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

夏の終わり頃にアケビに似た袋果が熟すと、背が割れて中から真っ赤な果肉と青味を帯びた黒色の種子が剥き出しになりますが、その鮮やかな色彩のコントラストは息を呑むほどの美しさです。　

ヤマシャクヤクは北海道から九州まで広く分布し、私が山に登り始めた５０～６０年前は近畿地方でも普通に見られる花でしたが、山が荒れたのと、心ない人の盗掘で、めっきりと減ってしまいました。　金剛山で素晴らし群落を発見して以来、毎年花時に訪れては、渇を癒しております。