ハキダメギク(悪口雑言は庶民の文化)
この可憐な花にハキダメギクと云う差別用語に近いネーミングをしたのは牧野富太郎博士である。1932年に世田谷の掃き溜めで発見したからだと聞いているが、山野草をこよなく愛し、洒脱さと諧謔味を生涯忘れなかった博士が、単純にこの名を付けたとは思えない。ガキ大将を「悪たれ」「悪太郎」と云うのに倣い、「掃き溜めに鶴=掃き溜めに咲く可愛い奴」の可笑しみを込めているのではないかと推察しているのだが・・・。
実際に、ハキダメギクは好窒素性植物と呼ばれる植物のひとつで、肥沃な土地を好み、 畑の隅の堆肥置き場や野菜屑の捨てた辺りに群落と作るので、それを見極めてのネーミングだとすれば「博士の慧眼おそるべし…」と云わねばならないだろう。
詩人川崎洋氏は著書「かがやく日本語の悪態」の中で、「差別語は人を殺傷する忌わしい言葉だが、ユーモアのセンスから生まれた言葉遊びの悪態は庶民の文化である」と云いきっておられるが、いくら弁護があつてもハキダメギクは悪名である。
朝日新聞の「天声人語」欄で、名前で損をしている山野草として、ドクダミ・ヘクソカズラ・オオイヌノフグリを挙げていたが、これにハキダメギクとブタナを加えることを提言したい。 ただし、この花の蔑称は日本だけではなようで、イギリスでは Frennch weed と呼び、英仏戦争以来犬猿の間柄といわれる国民感情が植物まで巻き込んでいるらしい。
同じ仲間にコゴメギクがあり、ちょっと見には判別難いが、後者は姿がほっそりしており、葉の幅が狭く、全体に毛が少ない。
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