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2010年8月13日 (金)

ハキダメギク(悪口雑言は庶民の文化)

Photo_2 この可憐な花にハキダメギクと云う差別用語に近いネーミングをしたのは牧野富太郎博士である。1932年に世田谷の掃き溜めで発見したからだと聞いているが、山野草をこよなく愛し、洒脱さと諧謔味を生涯忘れなかった博士が、単純にこの名を付けたとは思えない。ガキ大将を「悪たれ」「悪太郎」と云うのに倣い、「掃き溜めに鶴=掃き溜めに咲く可愛い奴」の可笑しみを込めているのではないかと推察しているのだが・・・。

                    実際に、ハキダメギクは好窒素性植物と呼ばれる植物のひとつで、肥沃な土地を好み、Photo_4 畑の隅の堆肥置き場や野菜屑の捨てた辺りに群落と作るので、それを見極めてのネーミングだとすれば「博士の慧眼おそるべし…」と云わねばならないだろう。

詩人川崎洋氏は著書「かがやく日本語の悪態」の中で、「差別語は人を殺傷する忌わしい言葉だが、ユーモアのセンスから生まれた言葉遊びの悪態は庶民の文化である」と云いきっておられるが、いくら弁護があつてもハキダメギクは悪名である。

朝日新聞の「天声人語」欄で、名前で損をしている山野草として、ドクダミ・ヘクソカズラ・オオイヌノフグリを挙げていたが、これにハキダメギクとブタナを加えることを提言したい。  ただし、この花の蔑称は日本だけではなようで、イギリスでは Frennch weed と呼び、英仏戦争以来犬猿の間柄といわれる国民感情が植物まで巻き込んでいるらしい。

同じ仲間にコゴメギクがあり、ちょっと見には判別難いが、後者は姿がほっそりしており、葉の幅が狭く、全体に毛が少ない。

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2010年8月 5日 (木)

カミガモシダ(「オタク」話を聞いてください)

Photo_3 春日山原生林のナギの純林の下で、カミガモシダ・ナチシダなど暖地性のシダの群落を見つけて「羊歯屋」と呼ばれてた若い頃が思い出されて、久しぶりに血が騒いだ。

中学から高校時代にかけて生物の指導を受けた先輩が「兵庫県下のシダ植物 の生態」を生涯のテーマとなさっていた方で「山を歩くついでに、シダを集めてくれ」との要請を受けたのが最初で、先輩の論文に「○○山××谷・松井採集」と記載していただくのを楽しみに、この花も咲かない変な植物との長い付き合いが始まり、遂には仲間に「羊歯屋」とからかわれるほどのめり込んだ一時期があったと云う訳である。

そのお陰か、60年振りの対面にも拘わらず「カミガモシダ、日本の固有種、本州の新潟県・岐阜県以西、四国・九州に産するがやや稀、ヌリトラノオに似るが羽状の裂片の切れ込みが大きく、無性繁殖するので区別することができる・・・」という図鑑の文句がすらすらと暗唱できたのだから、われながら驚いた。

京都の上賀茂神社の神域で発見されたのでこの名が付けられたといわれるこのシダに、奈良の春日大社の森で再開できた因縁も面白いが、それよりも、最近、気候の変化や盆栽業者による乱獲で数を減らし近畿レッドデータで絶滅危惧種Bランクにあげらている聞いてるだけに、その健振りが嬉くて、長々と「オタク話」を述べた次第であります。

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