ソヨゴ(緑の葉がトキ色に変わる草木染めの魔術)
ソヨゴの名の由来は、いろいろあるようだが、私は葉の縁が波打っていて、そよ風が当たるとサヤサヤとそよぐところから名付けられたと言う説が一番気に入っている。
冬枯れの雑木林で深い緑の葉がよく目立つので漢字では「冬青」と書く。
中部地方など広い地域で「サカキ」と呼んで神事に使い、木曾では「フクラシバ(福をもたらす木)」の名で。門松の添え木にするなど庶民の生活に深くかかわってきた樹木だが、最近もう一つの効用があることを知ったので、ご紹介させていただこう。
私の拙い文章よりも、草木染めの第一人者で人間国宝、名随筆家としても知られて、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞された志村ふくみ氏の名著「語りかける花」の一節を抜き書きして、これに代えさせていただくことにする。
その(冬青の)まっ青な葉を炊き出して、染めあがってくる鴇(トキ)の羽根のようなうすべに色をなににたとえよう。私は手前勝手と笑われても、この色を中年のやさしい女性におくりたい。 (中略) 髪に少し霜が下りて、老いがどこからかしのびよる間に、どうかあなたの心身をやさしく包んで…冬青の淡紅色はそういう色の響きと香気を秘めているように思われる。
深緑が鴇色に変わる不思議さは、私には魔術としか思えないが、未だ色香を失わぬ上臈がまとう淡い鴇色の「うちかけ」の衣ずれの音が聞こえるような描写ですね。
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