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2009年1月30日 (金)

ウンナンサクラソウ(春はそこまで)

Photo_2 立春を前にした1月29日に、我が家のウンナンサクラソウが開花した。プリムラ・マラコイデスの初花が12月30日だったから、丁度1月遅れたことになるが、両者が咲き揃って、春の気配が、一段と強くなってきた。

10年ほど前に、花の仲間から種をいただいた頃は、余り見掛けず、通りがかりの人から名を聞かれることも多かったが、最近急に栽培する人が多くなって、あちらこちらで、花を見る。 種をいただくときに中国の雲南省に分布の中心があり、プリムラ・シネンシスの近縁種だと説明を受けた。                               Photo_3

栽培方法は、プリムラ・マラコイデスと同じ扱いをして差し支えないようで、我が家では双方を同じ時期に採種して、取り播きで苗を作り、秋の初めに鉢やプランターに定植することにしているが、もう1か月もすると下の写真で見る通り両者が競うように花を咲かせて、早春の庭先を賑わせてくれることになる。

プリムラの仲間は、マラコイデスやオブコニカのように毒性を持つものが多く、触るとウルシにかぶれたような症状が出るが、ウンナンサクラソウは安全らしく、過敏症の家内も安心して、植え替えや花摘みをしているようだ。

花の径は2~3cm、白っぽい花弁の縁が僅かに薄紅色に染まる程度て、派手さはないが、パンジーやビオラなど多彩な花のなかで、それなりに存在感を示し、我が家ではなくてはならぬ早春の花となっている。

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2009年1月21日 (水)

ソヨゴ(緑の葉がトキ色に変わる草木染めの魔術)

Photo ソヨゴの名の由来は、いろいろあるようだが、私は葉の縁が波打っていて、そよ風が当たるとサヤサヤとそよぐところから名付けられたと言う説が一番気に入っている。

冬枯れの雑木林で深い緑の葉がよく目立つので漢字では「冬青」と書く。

中部地方など広い地域で「サカキ」と呼んで神事に使い、木曾では「フクラシバ(福をもたらす木)」の名で。門松の添え木にするなど庶民の生活に深くかかわってきた樹木だが、最近もう一つの効用があることを知ったので、ご紹介させていただこう。

私の拙い文章よりも、草木染めの第一人者で人間国宝、名随筆家としても知られて、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞された志村ふくみ氏の名著「語りかける花」の一節を抜き書きして、これに代えさせていただくことにする。

その(冬青の)まっ青な葉を炊き出して、染めあがってくる鴇(トキ)の羽根のようなうすべに色をなににたとえよう。私は手前勝手と笑われても、この色を中年のやさしい女性におくりたい。 (中略) 髪に少し霜が下りて、老いがどこからかしのびよる間に、どうかあなたの心身をやさしく包んで…冬青の淡紅色はそういう色の響きと香気を秘めているように思われる。

深緑が鴇色に変わる不思議さは、私には魔術としか思えないが、未だ色香を失わぬ上臈がまとう淡い鴇色の「うちかけ」の衣ずれの音が聞こえるような描写ですね。

 

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2009年1月17日 (土)

キカラスウリ(地上の惑星)

Photo 年末雑用に追われ、名神高速道路吹田インターの側壁に蔓を伸ばすキカラスウリを忘れていたので、新年に訪ねると十数個の実が地面に散乱していた。カラスに突っつかれたのか、蔓が枯れて重みに耐えかねて落ちたのか、かろうじて残った数個の実を撮影することができた。

直径6cmを超えるマルマルとした果実が冬の日に輝いて「地上の惑星」のように見える。

真っ赤な実をつけるカラスウリの方は、里山の麓まで出掛けないと見ることはできないが、キカラスウリは都会の空地にも平気で、むしろそんな人臭い場所を好んで生えるような気がする。 そのキカラスウリを継続的に観察していると、典型的な省エネ植物で、なりふり構わずケチに徹して蓄財に励み、子孫の繁栄を図っている様子が感じられて思わず苦笑させられる。 そのガメツさを列挙してみよう。

①茎はできる限り細くし、長く伸ばして木や壁を伝い、なるべく上に出て場所を確保する

②広くて大きい葉を重なるように広げて太陽の光を独占する

③稼いだエネルギーを澱粉に変えて、せっせと地下の根の貯蔵庫に貯め込む。(この澱粉から作られるのが「天花粉」で幼い頃お世話になりました)

④花は房状で、元手以上に大きく見せる工夫があり、夜行性のスズメガと花粉媒介の独占契約を結び、ガが活動する夜だけ開いて、朝には萎れる

⑤夏の終わりに、蔓の先端が地面にもぐり、地下にナンキンマメのような小イモを作って無性繁殖する (ちゃっかりと生存保険を掛けている)

⑥中がスケスケなのに種子が一杯詰まった果実は丸くて大きく、鮮やかな黄色は広告効果抜群である

ちゃっかりした植物ですね。

                                 

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2009年1月 9日 (金)

フユイチゴ(久しく服すれば老いず)

Photo 平成20年の登り納めに、金剛山系の岩橋山を富田林からの登り、奈良の当麻に降りた。紅葉の時期を過ぎると、山は急激に彩を失う中で、フユイチゴのルビーのような艶やかな実が目に眩しい。

「真冬に熟すフユイチゴは山の小鳥や小動物の貴重な餌だね」と話すと、仲間は「それにしては食べ残しが多い」と言うが、よく観察すると、一つの花序の中には未熟な粒が多く、時間を掛けてゆっくり成熟してゆく様子がよく解る。摘まんで口に入れてみると、未熟な実は渋くて酸っぱく、色が変わるほどに熟した実はほんのりと甘い。動物達はそれを熟知していて、完熟した実を大事に食べているらしい。      

さて、日本に約60種ある野生のイチゴの類は滋養強壮・老化防止に効くらしい。江戸時代の博物辞典「和漢三才図絵」に曰く。「果実は甘く、酸、五臓を安んじ、精気を益し、志を強くし、力を倍す。久しく服すれば老いず・・・」、「久しく老いず」が嬉しい。

「しまった。もう少し若い時に服すればよかった・・・」

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2009年1月 6日 (火)

ウラジロ(ウラジロの生き様にあやかろう)

Photo ウラジロが橙やユズリハとともに正月飾りに使われる理由には、いろいろな説があるが、

①色あせることのない常磐の緑にあやかりたい

②規則正しく左右に分かれる葉の柄が夫婦円満を表す

③毎年新芽が出て葉の代が重なるのが目出度い

の中で、私は③説をとりたい。シダの仲間は普通その年に出た葉は1回限りで成長を止めるのに、ウラジロの仲間だけは葉の先端に生長点があり、毎年そこから新芽が出て2層3層を葉が重なる。関西では Photo_2 精々3回程度で成長を止めるが、熱帯地方では条件次第でとどまることなく10数メートに達することも珍しくないという。

成長を続けるのがウラジロの仲間の最大の特徴であり、新芽が出揃った時が一番美しいと思うのに、図鑑類にはその解説文はあつても、写真の掲載がないのが少し寂しいので、昨年の5月に比良山麓で撮った写真をご紹介させていただこう。

生長と言えば、従来脳細胞は幼児に形成されたのもが年齢がすすむにつれて減少する一方で、回復することはないと言うのが定説となっていたが、最近、良い刺激を与えれば、海馬領域を中心に、年齢に関係なく増殖し生長することが確認されたという。 その条件は、

① 手指の細かい運動を怠らない

② 刺激のある環境に身を置く

③ 読書する、絵や文章を書く、クイズを解くなど頭の訓練を続ける

④ バランスの良い食事を摂る

にあるそうな。 とし爺も当年77歳、ウラジロにあやかって、成長点を枯らすことなく生き続けるよう心掛けたい。

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