イシミカワ(アメリカに渡った変な害草)
原産地はインドから東南アジアで、イネと共に伝来した史前帰化植物と思われており、人の居住域にしか生えない。
イシミカワという名前も奇妙で、その由来は、①「石膠=イシニカワ」が訛ったという説、②弘法大師が大阪の「石見川」に生えるこの草を見つけて住民に打撲の妙薬だと教えたという説、③果実の皮が固いので「石実皮」・・・などさまざまな説があるらしいがいま一つピンと来るものがない。
1年草で、芽生えは遅いのに、芽を覗かせるやいなや細い針金のような茎と縦横にのばし、小さな逆棘で他の植物や垣根、門塀にからみつき、あっと言う間に人の背丈をはるかに超える。一見なよなよしているように見えるが、小さな棘は驚くほど固くて鋭利で、触ると飛び上がるほど痛い。
葉も茎も、夏の終わりにひっそりと咲く花も、ほとんど目立つことがないが、盾のようで目立つ苞葉をもつ葡萄状の果実が熟すころになると、俄然脚光を浴びる。果実を包む浅緑色の萼は熟すに従って桃・赤紫・青と色が変わり、霜がおりる頃になると一部の葉や苞葉が紅葉して、この憎まれ者が一時期、しおらしく可憐に見えるところが面白い。
それにしても、タデ科タデ属に奇妙な名を持つものが多いのはなぜだろう。この「イシミカワ」はまたの名を「カエルノツカッカキ=鋭い棘で蛙の面を引っ掻く」と言うし、「ボントクタデ=うすら馬鹿ノタデ」「アキノウナギツカミ=秋の鰻掴み」「ママコノシリヌグイ=継子の尻拭い」と、どれもおかしい。
奇妙なネーミングは、我が国だけではなさそうで、この草の帰化を許した北アメリカでは、その成長の早さに驚いて、「Mile a minute weed=1分で1マイル草」とユーモラスに呼ぶ一方で、家畜の被害に手を焼いて「Devile tale tearthumb=悪魔の尻尾」または「東洋の小悪魔」と呼んで忌み嫌っているらしい。しかし、我が国の牧場も北アメリカ渡来の「アメリカオニアザミ」に手を焼いているのだから、差し引きして「おあいこ」としなければなるまい。
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