ミゾカクシ(園芸業者の安易なネーミングに異議あり)
日本全土は言うに及ばず、中国からインドシナ半島・インドネシア・インドの熱帯~温帯に広く分布する世界雑草の一つで、我が国では水田の周辺など人臭いところにしか生えないところから、史前帰化植物だろうと言われている。 田の水路に繁殖するのでミゾカクシと呼ぶが、大群落を作って畦全体を覆い尽くすのでアゼムシロとも言う。 以前南中国を旅した際に、広東郊外の水田で途方もない大群落を見て、「ミゾカクシ」などというチマチマした名で呼ぶのがいかにも日本流で「ちいせぇ、ちいせぇ」と感じたことが思い出される。
キキョウ科では珍しく左右相称の花をさかせる。径1cmにも満たない薄紫色の花が田の畔に咲いていても、さして人目を惹くことはないが、クローズアップしてみると、なかなかの美花である。
学名は Loberia chinensis Lour で、夏の水辺を彩るサワギキョウと同じミゾカクシ(ロベリア)属の花だが、このミゾカクシ(ロベリア)属は世界中に365種を超える大属なのに、我が国では園芸業者が南アフリカ原産のルチチョウソウを「ロベリア」と名付けて売り出していらい「ルリチョウソウ」という舌を噛みそうな名前に代わって、語呂の良い「ロベリア」の名前が定着してしまった。
動植物の世界は、リンネが学名を創設して以来、紆余曲折はあったものの、それが全世界に定着し、厳密に運用されているのに、コモン・ネームのルーズさは目に余るものがある。売らんかなの商業主義から、一番安易な「属名」と商品名とし、流行ればそれでよし、流行らなければ、立ち消えになってしまう。
どうにかならないか・・・と叫んでも、どうにもならないことでしょうね。
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