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2008年8月23日 (土)

ミゾカクシ(園芸業者の安易なネーミングに異議あり)

Photo 日本全土は言うに及ばず、中国からインドシナ半島・インドネシア・インドの熱帯~温帯に広く分布する世界雑草の一つで、我が国では水田の周辺など人臭いところにしか生えないところから、史前帰化植物だろうと言われている。 田の水路に繁殖するのでミゾカクシと呼ぶが、大群落を作って畦全体を覆い尽くすのでアゼムシロとも言う。 以前南中国を旅した際に、広東郊外の水田で途方もない大群落を見て、「ミゾカクシ」などというチマチマした名で呼ぶのがいかにも日本流で「ちいせぇ、ちいせぇ」と感じたことが思い出される。

キキョウ科では珍しく左右相称の花をさかせる。径1cmにも満たない薄紫色の花が田の畔に咲いていても、さして人目を惹くことはないが、クローズアップしてみると、なかなかの美花である。

学名は Loberia chinensis Lour で、夏の水辺を彩るサワギキョウと同じミゾカクシ(ロベリア)属の花だが、このミゾカクシ(ロベリア)属は世界中に365種を超える大属なのに、我が国では園芸業者が南アフリカ原産のルチチョウソウを「ロベリア」と名付けて売り出していらい「ルリチョウソウ」という舌を噛みそうな名前に代わって、語呂の良い「ロベリア」の名前が定着してしまった。

動植物の世界は、リンネが学名を創設して以来、紆余曲折はあったものの、それが全世界に定着し、厳密に運用されているのに、コモン・ネームのルーズさは目に余るものがある。売らんかなの商業主義から、一番安易な「属名」と商品名とし、流行ればそれでよし、流行らなければ、立ち消えになってしまう。

どうにかならないか・・・と叫んでも、どうにもならないことでしょうね。

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2008年8月22日 (金)

トモエソウ(ヨーロッパでは聖なる花

Photo 北アルプスの縦走を終え、滝沢あたりの小屋に泊って帰る朝、上高地に向う沿道に、開花したばかりのトモエソウの黄金いろの花が朝日に輝いて美しかったことが思い出される。

直径が5cmと大きく、巴形の得意な花弁をもつこの花は、ヨーロッパでも人目を惹いたらしく、英国では「セント・ショージー・ワート(聖ヨハネの花)と呼び、悪魔除けの像の前に捧げる習慣があったという。

花の形が船舶のスクリュウににているので、花の仲間と「スクリュウバナ」など勝手な名前を付けて親しんできたが、最近見ることがすくなくなったような気がする。

もったいないことに、この豪華な花は1日花で、朝に開いて夕方に閉じる。 インターネットを検索していても「ははん、この方は午後に撮影したな」と解るから面白い。なにを隠そう上に掲げた写真の花も、伊吹山の山頂で、午後2時に撮影したので花弁が萎れ始めている。

「女性の手の甲やうなじと同様、実年齢はすぐ解る・・・」などと、いわでものことを口走って、顰蹙を買った苦い経験があったっけ・・・・。

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2008年8月 1日 (金)

カワラマツバ(郷に入れば郷に従う逞しさ

Photo_3 「郷に入れば郷に従う」と言う諺は、融通無碍な生きざまというようだが、カワラマツバは、その優しい姿に似ずたくましい植物で、乾いた河原・堤防の法面・畦道の路肩から1000mを超える山の崩壊地や草原まで、所を選ばず住み着いて、細い茎の先端に円錐花序を出して、小さくて白い花をいっぱいに咲かせる。

近縁の種にウスギカワラマツバ(薄黄色)・キバナノカワラマツバ(黄色)・エゾカワラマツバ(黄色)があるが、花の色が変わるだけで、姿はそっくりである。 聞くところによればヨーロッパから北アジアに広く分布するキバナノカワラマツバが母種で、カワラマツバはその変種、ウスギカワラマツバは両者の交配種だと言う。

伊吹山山頂は、エゾカワラマツバを除く3種のカワラマツバが混在し、同時に観察できる貴重な場所だが、こうしてイブキジャコウソウの花に囲まれて咲く様子を見れば、河原や土手に生える雑草とは思えず、いっぱし風格のある山草に見えるから嬉しい。

花を嗅ぐと仄かにブドウのような香りがする。

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