アサザ(汚水の中のアサザ)
環境省絶滅危惧種Ⅱ類(VU)のアサザを、生活用水が遠慮なく注ぎ込み、汚泥が川底に沈殿する大正川で発見した時には興奮して、「新聞社に知らせればニュースとなるだろうか」とか「茨木市か摂津市に通報する必要があるだろうか」などと重い悩んだが、世に有識者は多いと見えて、既に環境省にも報告され、逸出植物の自生地として登録されていると聞いて安心した。
アサザは気難しい植物で、戦後植物に興味を満ち始めて播磨地方を歩いていた頃には、主要な池沼の至るところでアサザ・オニバスが見られたのに、農薬汚染が問題となる頃に、あっという間に姿を消し、近畿地方でも大阪府全滅、奈良県存否不明、兵庫県2群、滋賀県・京都府・和歌山県にしれぞれ1群がかろうじて生息し、全国的に見ても61群しか確認できていないと言う。
幸い、NPO霞が関プロジェクトに見る通り、保護活動が進捗し、株分けされたものが各地の植物園や汚染が改善された池沼に戻されたりして、一見絶滅の危機は回避できたように見えるが、同族不稔、たとえ実っても環境が整わなければ発芽しないなど克服すべき条件が未解決で、前途の楽観は許されないらしい。
世界的にみても、環境破壊の最たるものは内陸部に湿地帯で、最近の百年間に、日本の湿地の50%が失われたが、ヨーロッパも50%(ただしそれ以前の百年の破壊度が高いので同列に論じられない)、北米70%、南オーストラリア・ニュージーランドに至っては90%焼失、それと並行して湖沼や河口の干潟などが埋め立てられて、生態系の破壊は加速的に進行しているという。
そんな流れの中で、今年も大正川のアサザは数群が美しい花を咲かせたので、近影をご紹介させていただこう。
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