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2008年6月30日 (月)

フランネルフラワー(花卉業界のニューフェイス)

Photo 原産地はオーストラリアで、セリ科アクティノツス属のワイルドフラワーとして、十数年前の野草関係の雑誌で紹介されたことがあり、エーデルワイスを二回り程大きくしたような清楚な花が印象に残って、いずれ輸入されるだろうと期待していたのに、一向に姿を見せてくれなかった。

ところが、3~4年前に種子繁殖による大量増殖に成功したというニュースを聞いてしばらくすると、すぐに園芸店の店頭に顔を出し、あっという間に民家の軒先で見られるようになったのだからその流通の速度に目を見張らされた。

聞くところによれば、岐阜県農業技術センターが増殖に成功して県のオンリーワン品種として園芸名を「フェアリー・ホワイト」として売り出し、2005~6年ジャパンフラワーセレクションのベストフラワー賞を獲得、その年の人気№1品種になったと言うから、その後の普及の早さを今更言いたてることもない訳であるが、ワイルドフラワー愛好者としては、この花をオーストラリアの原野で発見した人の手記などが紹介されることを心待ちしている。

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2008年6月27日 (金)

アサザ(汚水の中のアサザ)

Photo_3 環境省絶滅危惧種Ⅱ類(VU)のアサザを、生活用水が遠慮なく注ぎ込み、汚泥が川底に沈殿する大正川で発見した時には興奮して、「新聞社に知らせればニュースとなるだろうか」とか「茨木市か摂津市に通報する必要があるだろうか」などと重い悩んだが、世に有識者は多いと見えて、既に環境省にも報告され、逸出植物の自生地として登録されていると聞いて安心した。

アサザは気難しい植物で、戦後植物に興味を満ち始めて播磨地方を歩いていた頃には、主要な池沼の至るところでアサザ・オニバスが見られたのに、農薬汚染が問題となる頃に、あっという間に姿を消し、近畿地方でも大阪府全滅、奈良県存否不明、兵庫県2群、滋賀県・京都府・和歌山県にしれぞれ1群がかろうじて生息し、全国的に見ても61群しか確認できていないと言う。                            Photo_4

幸い、NPO霞が関プロジェクトに見る通り、保護活動が進捗し、株分けされたものが各地の植物園や汚染が改善された池沼に戻されたりして、一見絶滅の危機は回避できたように見えるが、同族不稔、たとえ実っても環境が整わなければ発芽しないなど克服すべき条件が未解決で、前途の楽観は許されないらしい。

世界的にみても、環境破壊の最たるものは内陸部に湿地帯で、最近の百年間に、日本の湿地の50%が失われたが、ヨーロッパも50%(ただしそれ以前の百年の破壊度が高いので同列に論じられない)、北米70%、南オーストラリア・ニュージーランドに至っては90%焼失、それと並行して湖沼や河口の干潟などが埋め立てられて、生態系の破壊は加速的に進行しているという。

そんな流れの中で、今年も大正川のアサザは数群が美しい花を咲かせたので、近影をご紹介させていただこう。

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2008年6月24日 (火)

カラスビシャク(畑の道化師)

Photo 畑を耕した経験のある方は先刻ご承知だが、梅雨の季節に入り頃に、畑の畔に、この草がニョッキリと顔をだす。

こずるくて胡散臭いペテン師のようでもあり、頬かぶりしたこそ泥とも見えて、なんとなく愛嬌があるので、抜くのが躊躇われるが、雑草に違いないので、思い切って引っ張ると、地上部だけはすっぽりと抜けるが、地下に球根があって根絶することは不可能に近く、翌年は蔓延って何倍かになり、あちらからも、こちらからも、むっくりと頭を擡げてくるので根負けしてしまう。

同属のマムシグサやコンニャクなどと同じように仏炎苞と呼ばれる不気味な花を咲かせるが、この草は背丈15cm内外で、なんとなく道化師のような雰囲気があるので花を「烏の柄杓」に見立てたという。

思わず噴き出したくなるのが別名の「ヘソクリ」で、葉の柄にムカゴを抱えている様子が、ヘソクリを抱えて周囲を見回し、オドオドしている農家の若嫁そっくりに思える。

それにしても、良い名をつけたもので、庶民の観察眼の確かさに頭が下がる思いがする。

この草を乾燥したものを漢方で「半夏」と言い、咳止めと足の裏の肉刺(まめ)の除去に特効があると聞いている。

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2008年6月 1日 (日)

ツクバキンモンソウ(名前負けしそう・・・)

Photo ツクバキンモンソウは、キンモンソウ(ニシコゴロモ)の変種で、筑波山で発見されたキンモンソウ(金紋草)と言うことで、この名がついた。関東以西の太平洋側に分布すると言う。

実は、この写真の個体をツクバキンモンソウと同定するのに少し躊躇いがある。 と言うのは、花冠の上唇が短いなどツクバキンモンソウの特徴を備えているが、図鑑やインターネットで検索した画像では、葉脈が紫色で、花色が白味を帯びているのに、写真のものは葉脈が白く、花は青色が濃いので、別種が、それとも噂に聞くキランソウとの雑種ではないかと疑われる。 しかし、日当たりの少ない金剛山黒栂谷で撮影したので、本来の色調に発色していないのかも知れない。 (どなたか鑑定してください)

母種のキンモンソウ(ニシキゴロモ)は、日本海側をテリトリーとし、比良山系でも見掛けるし、佐渡のドンデン山・金北山一帯では、いたる所で出会った。

それにしても、総体に地味なシソ科の植物に、どうしてこんなに派手な名前が多いのだろうか。キランソウの別名のジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)・ラショウモンカズラ(羅生門蔓)・カイジンドウ(甲斐神頭)・ナギナタコウジュ(薙刀香需)・ムシャリンドウ(武者竜胆)など奇怪な名前や勇ましい名ががあるかと思えば、ジュウニヒトエ(十二単)・カリガネソウ(雁草)・テンニンソウ(天人草)・ホトケノザ(仏の座)・タツナミソウ(立浪草)など花が名前負けしてしまいそうな佳名を持つものや、ヒキオコシ(引き起し)・カキドオシ(垣通し)・メハジキ(目弾き)など名の由来を聞けば吹き出しそうな滑稽なものと、実に多彩である。

母種のニシキゴロモも、その例にもれず、「錦衣」と言うにはあまりにも地味な色調だし、ツクバキンモンソウも「金紋」のイメージとはかけ離れた地味で平凡な植物なので、出会う度に違和感を覚えている。

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