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2007年8月28日 (火)

トレニア(バイオ技術の先端を往く花)

Torenia_2 猛暑の大阪で、元気に夏越しして咲き続ける花が少ない中、ナツスミレの異名を持つトレニアは貴重な存在で、紫色の小花(写真下)が好きな家内が、30年来、植え続けて楽しんできた。

そのトレニアが、バイオ技術のトップランナーとして脚光を浴びてきたので驚いた。

トレニアの雌しべの胚嚢が、顕花植物では唯一外部に露出していることに注目した東大の東山哲也氏とそのグループが、世界で始めて、生きた花で受粉が行われる全プロセスを顕微鏡写真で撮影することに成功したばかりでなく、受粉のメカニズムの解明とそれを促進するホルモンの存在を発見した。                                                                                                          Torenia_3

また、強健で、栽培し易く、遺伝操作の容易なトレニアの特性を利用して、或る研究所は、この花に重イオンビーム(炭素・窒素・イオン)を加速して放射し、基本の1種から1年間に100の新品種を生み出したと言うし、別の研究所では、ペチュニア・カボチャ・キンギョソウなどの遺伝子をトレニアに導入することによって、花色や花の形・草丈などの異なる多彩な園芸品種を作出している。

注目すべきは、活性酸素を消去する遺伝子を遺伝子交換して、生活環境のストレスに耐性のあるトレニアが生み出されたことで、この技術が拡大されれば、砂漠や荒廃地の緑化などにも威力を発揮するかも知れない、などなど・・・。

密かに可愛がっていた田舎娘のトレニアが、才能を見出されて、あれよ、あれよと言う間もなく、世界のプリマドンナとして脚光を浴びたような気がして戸惑っている。

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2007年8月27日 (月)

ハグロソウ(子供達はアッカンベー花と呼ぶ)

Agurosou_2 この季節に、夏緑林の樹下で見るハグロソウは、平凡な花ではあるが、なんとなく愛嬌があって可愛い。

花冠は2つに裂けて唇状、雄しべが2本、果実は2室に分かれて、熟すとそれぞれ2個の種子を吐き出すという完全な2数性の植物である。

わが国には2数性の花は少ないらしい。

ハグロソウは葉が暗緑色なので「葉黒草」と言うのは実に無粋なネーミングである。

子供の頃に、この花を見掛けると、誰言うとなく「アッカンベー花」と呼んで興じていたが今から思い返すと、いささか下品ではあるが、この花の特質を鋭く掴んでいたように思われる。 子供の感性は馬鹿にならない。

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2007年8月15日 (水)

キョウチクトウ(広島の爆心地で最初に咲いた花)

Kyoutikutou 気温35℃を超える万博公園で、暑さをものともせず咲き続ける花と言えば、サルスベリ・キョウチクトウ・ムクゲ・フヨウ・ヒマワリなどだが、なかでもキョウチクトウは、100年間は草木は生えないと言われた広島の原爆の爆心地で、最初に咲いた花として知られる通り、インド原産の花木だけあって、厚さには滅法強い。

散歩を終えて、畳の上に寝転んで、馴染みの推理小説を引っ張りだして読み耽り、倦むと誰憚ることなく居眠るのは、私の得意とする消夏法の一つである。             Kyoutikutou_2

今日、手に取ったのがスー・クラフトン著「アリバイのA]で、「泥棒のB]・「死体のC」と続く、1980年代に評判となったABCDシリーズだが、妻が不貞を働いた元の夫を殺害するのに使ったのが、キョウチクトウの樹皮の粉末だったというのは、余りにも出来すぎた話である。 

時々、こう言う現象に出会うが、心理学者ユングの言うシンクロンシティ=共時性または同時同調性と言うのかも知れない。

わが国では、よく似たトリカブト殺人事件があった。 強心配糖体を含有する植物としては、アカメガシワ・オモト・ススラン・フクジュソウなどが知られているが、キョウチクトウにも強烈な殺傷力があるのだろうか。 インターネットで検索してみると、インドに遠征したアレクサンダー大王の大軍がキョウチkトウの毒で全滅したという言い伝えがあるらしい。

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ザクロ(「紅一点」の由来の花)

Zakuro 「紅一点」の由来をクイズ形式で述べてみよう。 王安石(宋時代の詩人)下記の詩の題名「□□詩」に入る漢字2字の花の名は?

万緑叢中 紅一点 動人春色不須多

「人を動かすに春色多くを用いず」と言う語句が素晴らしい。

答えは「石榴=ザクロである。牡丹・芍薬・薔薇はじめ数々の赤花の名花を生み出してきた中国で、なぜザクロなの・・・と訝る向きも多いと思うが、ご承知の通りザクロは、イランの東部ザクロス山脈原産と言わZakuro_2 れる小低木で、聖書にも出てくる果実である。おそらくシルクロードを経由して中国に齎されたと思われるが、元来、紅色と朱色の花を偏愛する中国のこととて、エキゾチックな外来の花木として持て囃され、王安石の詩にも詠み込まれたものだろうか。

ザクロには、もう一つ見逃せない伝説がある。 ザクロの実は人肉の匂いがすると言う。釈迦が好んで子供を食う鬼神「可梨帝母」に、ザクロを与えて人肉を食べないことを約束させたところ、「可梨帝母」は改心し、のちに子供を守る「鬼子母神」と崇められるようになったと言う。

最近ザクロ・ジュースが更年期障害や不妊に効くということで、盛んに宣伝されているが、一方で国民生活センターが「格別の効果は認められない」と言う反論をしたりして、騒がしい。 なにはともあれ、ソフトボール大の輸入ザクロは、私の大好きな果実である。

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