ヤブツバキ(京舞・事始め)
京都御所の北の端の旧近衛邸の庭園には、ヤブツバキの巨木があり、写真で見る通り、形のの良い枝を垂れて、初冬から春酣となる頃まで、絶え間なく花を咲かせる。
その風情が忘れられなくて、50年以上も通い続けているが、見飽きることがない。
散り椿もまた格別である。
宮廷に伝わる五節の舞の衣装には、椿紋がちりばめられているらしい。 京舞の初代は、近衛家に仕えて宮廷の風流舞を学んで京舞を完成させたとき に 、「玉椿、八千代に忘れぬ」と言う惜別の言葉を賜ったので、以降、家元は「八千代」を襲名すると言う。 その伝承を知ってから近衛邸のヤブツバキに対する想いが深まった。
ヤブツバキは、神話にも登場する日本最古の花木で、三輪山の麓で大和朝廷が始まって以来、宮廷と公家衆に愛されて、幾多の名品が生まれた。 幕府が江戸に移ってからは、破邪尚武の木として徳川家のシンボル・ツリーとなり、更に元禄以降は民間人も加わって、世界に冠たる椿王国が確立された。
椿は長寿の木で、京都には室町・安土桃山時代以来の古木や名木が現存していて、かない精力的に歩いて鑑賞してきたが、そのうえでなお、「椿はヤブツバキに限る」と言う思いを捨てきれないでいる。
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