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2007年1月24日 (水)

ヤブツバキ(京舞・事始め)

Yabutubaki 京都御所の北の端の旧近衛邸の庭園には、ヤブツバキの巨木があり、写真で見る通り、形のの良い枝を垂れて、初冬から春酣となる頃まで、絶え間なく花を咲かせる。

その風情が忘れられなくて、50年以上も通い続けているが、見飽きることがない。

散り椿もまた格別である。      

宮廷に伝わる五節の舞の衣装には、椿紋がちりばめられているらしい。 京舞の初代は、近衛家に仕えて宮廷の風流舞を学んで京舞を完成させたとき に 、「玉椿、八千代に忘れぬ」と言う惜別の言葉を賜ったので、以降、家元は「八千代」を襲名すると言う。 その伝承を知ってから近衛邸のヤブツバキに対する想いが深まった。Yabutubaki_2

ヤブツバキは、神話にも登場する日本最古の花木で、三輪山の麓で大和朝廷が始まって以来、宮廷と公家衆に愛されて、幾多の名品が生まれた。 幕府が江戸に移ってからは、破邪尚武の木として徳川家のシンボル・ツリーとなり、更に元禄以降は民間人も加わって、世界に冠たる椿王国が確立された。

椿は長寿の木で、京都には室町・安土桃山時代以来の古木や名木が現存していて、かない精力的に歩いて鑑賞してきたが、そのうえでなお、「椿はヤブツバキに限る」と言う思いを捨てきれないでいる。

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2007年1月22日 (月)

ブナ(ブナよ、生き残れ)

Buna 金剛山に登って、ブナに合ってきた。

日本列島に氷河があった頃、寒地を好むブナは、四国・九州にまで広がって、豊かな広葉樹林を形成し、縄文人の生活を支えてくれたが、地球温暖化の影響を受けて、その生息域がどんどん狭まっている。

20世紀の100年間で、世界の平均気温は0・6℃上昇したが、21世紀には更に加速して平均3・6℃の上昇が見込まれ、その結果ブナは、高地へ高地へ、(北へ北へ)、と追い詰められることは必定と思われるが、標高が1,000~2,000mの近畿の山には、逃げ場が無いので、早晩絶滅せざるを得ない。

1月9日、金剛山の山頂付近のブナ林は、いまのところ健在で、巨木の傍らには若木も育ち、枝に純白の樹氷をつけて、我々を歓迎してくれたが、孫か曾孫の時代には、確実に消滅すると宣言されると、深刻な気分にならざるを得ない。 二酸化炭素の排出量規制など世界規模の温暖化防止策が実って、この心休まる美しいブナの森が、少しでも長く生き残ってくれるように、祈りながら歩いた。

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