タンキリマメは、人里に近い山麓に生えるつる性の植物である。
茎・葉・花とも地味で、生涯殆ど目立つことのない雑草だが、12月にいると、一生で唯一度の不思議な芸を見せてくれる。
枝豆に似た豆果は、熟すと真っ赤に色付き、乾燥した莢にちょっと触るだけで、パチンと弾けて、なかから黒い二つの豆が飛びだすが、その黒い種子は、小蟹の目に似ている。
たった、これだけのことだが、秋の陽光がさんさんと降り注ぐ山道で演じられる里山の手品師の素朴な芸は、なんとも言えぬ可笑味があって、結構楽しい。
タンキリマメ(痰切り豆)というが、痰を切るなどの薬効はないようだ。
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