ネナシカズラ(不届きな寄生植物)
クズはわが国最大で最強の草なのに、そのクズなどに寄生して、養分を吸い取り、のうのうと生涯を過ごす不届き極まる植物が、このネナシカズラである。
郊外を散歩していて、草の上にラーメンをぶちまけたような異様な風景に出合うことがあるが、それがネナシカズラであると思って先ず間違いはない。
アサガオに近縁のこの植物も芽生えの時には、ちゃんと根を持ち、地上にミミズのような茎と伸ばして、将来居候するに足る草を探す。
最近の研究では、目のないネナシカズラが寄生主を探す最大の武器は一種の嗅覚で、植物が発散する微細な匂いを独自のセンサーで嗅ぎ分けて、その方向へ茎を伸ばして辿りつくと言う。
例えば、クズに辿りついたネナシカズラは、素早く絡みつき、吸盤を押し付けて、寄生根っを茎に差し込めば、生涯でただ一つの大作業は終わり、根は直ぐに枯れて、あとはひたすらクズの養分を吸い上げる「ヒモ」の暮らしを確立する。
自分で稼ぐ必要がないので、葉もなく、葉緑素も持たず、クズから搾取した養分を茎に再投資し、四方八方に枝を伸ばして覆いかぶさるので、クズは気息奄々、やせ衰えるが、ネナシカズラが花を咲かせて、実を撒き散らすまでは、決して殺さず、生かし続けて貢がせるというから恐ろしい。
人間にも、こんな奴がいましたね。
1ヶ月後の11月8日に同じ場所を訪ねてみると、花は全部実になっていた。その上、寄生植物の気楽さととうか、厚かましさというか実の数の多いこと・・・。
どちらにしても、栄養分は全部寄生主に依存して、原価が只だからケチケチしない。
やがて、この実が弾けると、中から径3mmほどの種子を辺りに撒き散らし、ヒモ人生一代を終わることになるわけだが、この種子を漢方では「兎糸子」と呼んで、皮膚病のほかは、強精・遺精・淋病・滋養強壮など、もっぱら性に関する疾患に効能を発揮すると言う、どこまでも変わった奴である。
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