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2006年7月16日 (日)

ヨウシュヤマゴボウ(永井荷風「葛飾土産」より)

Yousyuyamagobou_4

永井荷風の「葛飾土産」のこんな一節がある。

「山牛蒡の葉と茎と、その実の霜に染められた臙脂色の美しさは、去年の秋わたしの初めて見たものである・・・」

戦災で旧宅と膨大な書籍を失った荷風は、失意の身を市川の知人の宅に身を寄せ、江戸 川の河川敷などを散歩していて、この草を見付けたものだろうが、老いてなお好奇心旺盛な荷風の面目躍如と言ったところである。

しかし、荷風がもう少し観察を継続して、この写真のように、白い花を一杯つけた花穂が、緑濃い実に代わり、秋に臙脂色に熟す全過程と、その日本離れした造形美をつぶさに見ていたら、もっと驚き、日誌も虹彩を放っただろうに・・・と、惜しまれる。           Yousyuyamagobou_5

北アメリカ原産のこの草は、明治の初期に渡来したと言うが、蔓延したのは太平洋戦争後で、サツマイモやカボチャを作っていた焼け跡の畑に突如顔を出し、肥料不足でヒョロヒョロしている作物を尻目に、あれよあれよと言う間に私の背丈を越え、奇妙な花穂に花を付け、たわわに実をつけたことを思い出す。

今では都会の造成地や放棄畑・無住の人家の庭など所構わず、肥沃な場所では2mを超えるほど繁茂するが、道端などでは僅か20~30cmで花を咲かせて、実をつけるほどしたたかで生命力抜群の雑草である。

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