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2006年3月22日 (水)

タネツケバナ(田圃のある所タネツケバナあり)

taneukebana 早春の頃、郊外を散歩していると、田圃に淡雪が積もったと思うほど真っ白になっているのを見掛けるが、タネツケバナの群落と見て間違いないだろう。

タネツケバナは、イネと同時に大陸から帰化した史前帰化植物で、「田圃のある所タネツケバナあり」と言われるほど稲作と不可分の関係にあり、弥生時代以降、稲作の普及とともに全国へ拡がったらしい。 名前からして「種漬花」で苗代の準備のため、籾を水に漬ける頃に咲くので、この名が付いたと言う。    tanetukebana 春一 番に花を咲かせて、種子を田に撒き散らし、田圃に耕運機が入る頃には姿を消してしまうが、種子はイネが育つ夏の間、水中で十分の睡眠をとり、稲が刈り取られるといち早く目を覚まして、ロゼットの状態で冬を迎え、正月を越えると急激に成長して2月には次世代の花を咲かせて実を結ぶ。

草丈は僅か10~20cm、花も小さいがクローズアップして見ると純白の十字花が可愛いい。

同類には乾いた場所に生えるタチタネツケバナ、水辺に生えるミズタネツケバナ、帰化植物のコタネツケバナ(ミチタネツケバナ)などがある。

タネツケバナの由来については、面白い異説がある。 果実は長さ2cm、太さ1mmの線形で、熟すと二つに裂け、くるくるっと巻いて勢いよく種子を弾き飛ばすが、その勢いを「種付け馬」に見立て、それが訛ってタネツケバナなったと言うが、眉に唾をつけて聞く方がよさそうだ。

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2006年3月17日 (金)

ダンコウバイ(早春の里山を飾る花)

dannkoubai  関西の早春の里山を飾る花としては、マンサク・ダンコウバイ・アブラチャンが挙げられるが、マンサクの人気だけが先行していて、あとの二つの名前を言う人の少ないのが残念である。

中でも、ダンコウバイは「檀香梅」(檀香はビャクダンの異名)と言う名の通り、サンシュユに似た黄金色の花も美しいが、香りが素晴らしい。

クスノキ科クロモジ属の落葉性小高木なので、材にも芳香があって、クロモジと同様に高級料亭の爪楊枝や細工物に使われると言う。 実から絞った油が、山村では椿油に代る灯用とされ、朝鮮では頭髪料として好まれていたらしい。                                        dannkoubai

この木は、六甲山系では殆ど見掛けないのに、山続きと言って差し支えない能勢・猪名川の里山ではよく出合うのは、なにか特別の理由があるのだるか。

3月14日に義経が鵯越の奇襲の際に山越えしたという三草山を歩いて、時ならぬ吹雪に遭遇したが、一帯にダンコウバイが馥郁とした香りを放って咲いていた。

雌雄異株で写真(上)が雄花(下)が雌花である

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2006年3月16日 (木)

ウバユリ(転勤を嫌がるサラリーマンの様な植物)

ubayuri 淡路島の伊勢の森を歩いてウバユリの実に出合った。山でよく見る植物で、花と実の形が一風変わっているので、活け花の花材にされるが、その生態はもっと変わっている。

暗い樹林の下に生えるため、栄養分を蓄えるのに時間が掛かるのか、発芽してから7~8年間、せっせと地下の球根を太らせ、1回花を咲かせただけで親株は枯死してしまう。 一つの実に約600個の種子が詰まっており、種子には翼があって、風に乗って散布されると言いたいが、写真で見る通り、実は熟しても半分しか開かず、剛毛が種子を抑えていて、余程強い風が吹かないと飛び散らない。

事実、余り遠くへ種子を飛ばす必要もないらしい。 暗い樹下でしか生息できないこの植物の生息域は限られているので、そこからはみ出した種子は生き残ることができないからである。 そんな消極的なことで、子孫の繁栄が図れるのかと思うが、枯れて腐敗する前の球根は、ちゃっかりと分球して沢山の小球根をつくっているので、種子の発芽が悪くても案じることはない。 分球した球根は、種子から生まれた株よりも早く花を咲かせるので効率も良い。

つまるところ、ウバユリは、転勤を嫌がるサラリーマンのように、狭い地域に密着し、同属・親族が、肩を寄せ合って、暗い森の樹下で生き続けているのである。

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