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2006年2月27日 (月)

セツブンソウ(儚げで美しい早春の花)

setubunnsou 京都植物園で、セツブンソウを撮影中に、熟年のご夫婦に出会った。

青森にお住まいとのことで、何年か前に、ここで見たセツブンソウが忘れられず、電話で照会したところ咲いていると聞き、矢も盾もたまらず、今朝の一番機で青森空港を飛び立ち、さっき京都に到着したばかりだと言う。 たしかにセツブンソウとユキワリイチゲだけは東北では見ることができないが、それにしても「わざわざ、青森から…」と思わないでもない。 しかし、そう言う私だってハヤチネウスユキソウやミチノクコザクラに合いたくて東北へ出掛けているのだから、このご夫婦を物好きと言う訳にはゆくまい。            setubunnsou

若いころから、「野草を植物園で見るなんて・・・」と嘯いて、セツブンソウに合うために、中国山脈の山麓を歩き回っていたが、生育環境の変化に対する適応力は乏しいためにレッド・データブックの絶滅危惧種に指定されるほど生息域を狭めたこの花との出合いが困難になり、寄る年波で行動力が衰えてくると、現金なもので、毎年同じ時期に同じ場所で花を見ることができる植物園が、貴重な場所に思えてくる。

セツブンソウの花は、いつ見ても儚げで美しい。

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2006年2月22日 (水)

キルタンサス(冬の花火)

kirutannsasu 2月22日、我が家のキルタンサスやっと初花を咲かせた。 例年ならば冬至の日には満開になり、ピンクの細長い花筒を四方に向けて乱れ咲く様子が、冬の花火のように美しいのに、こんなに開花が遅れたのは、今年の天候異変が原因で、この花に限らず、すべての植物に大きな影響を与えているように思われる。

キルタンサスは、南アフリカ東海岸からマダカスカル島が原産と言われて、夏の暑さにも、冬の寒さにも、乾燥にも強く、花の少ない11月から3月頃まで咲き続ける貴重な花で、我が家では10年程前に数個植え込んだ球根が自然に増殖し、今では10号鉢一杯に広がり、毎年、数十本の花茎をだして、数百個の花を咲かせてくれる。        kirutannsasu

属名のCyrtanthusは、ギリシャ語のkyrtos=曲がったとanthus=花の合成語で、曲がった花を意味するらしいが、学名の通り花は直立する花茎の頂上に5~10個つき、90度近く曲がって咲く様子がなんとも可愛い。 

花色は乳白色からピンク色が基本だが、同属間の交配が容易で、種間雑種が数多く育成されているらしく、白・黄・アプリコット・サーモンレッド・濃赤色など多彩な品種が園芸業者のカタログを賑わせている。球根は分球していくらでも増えるが、園芸業者は、気温の高い沖縄や八丈島で増殖していると聞いている。

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2006年2月15日 (水)

アオキ(里山を彩る5色の風船)

aoki 生駒山で、里山を彩る5色の風船のような、美しいアオキの実を堪能することができた。

近鉄額田駅から、長尾谷を遡り、生駒山系を暗峠から鳴川峠まで縦走して千光寺へ下る道は、人通りも少なく、日溜りハイキングには、またとないコースで、例年ならば、早咲きの野梅やヤブツバキの花を存分に楽しむことができるのに、今年は蕾が固く、真っ赤に熟れる筈の谷筋のアオキの実も熟さず、青い実を残している。                 aoki

今年の寒気の影響が、里山に及んでいるのだろうか、一説には、遺伝的に完全に熟さない品種があるとも聞いているので、いずれとも判断し難い。

寒中も瑞々しいアオキの葉は揉むと真っ黒に変色する。

我が国の伝統的な保健薬である「陀羅尼助」や「百草丸」は、キハダを主原料として、センブリ・ゲンノショウコ・オウレン・ガッシュなどの薬草を練り合わせ、仕上げにアオキの葉を混入すれば、あの艶やかな漆黒の色合いが出ると、製造元の説明書に記載されている。

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2006年2月11日 (土)

ヘクソカズラ(ヘクソカズラ美顔水は商品化できるか)

hekusokazura 昔、淀川の河川敷でゴルフを楽しんでいた時、1組前のパーティのアメリカ人と思われる女性が、ヨシに絡みつくヘクソカズラの実が陽の光を受けて輝いているのを見付けて、

「ワンダフル、この実は可愛い」と叫んで駆け寄ってきた。

名前を尋ねられて「Hekusokazura」とだけ答えて、その名の由来については、ご婦人に対する国際上のエチケットもこれあり、口を噤んで遣り過ごした。

もっとも、私には「屁」と「糞」を英訳する語学力がある筈なかったが・・・。  確かに、黄土色でガラス質の物質に覆われたヘクソカズラの実と蔓は、エキゾチックであり、シュールで心を惹かれる。

この実が、第2次世界大戦以前、あかぎれ・しもやけ・びび割れの特効薬として、盛んに用いられたことを知っている人も少なくなったが、それ以上に、実をアルコールに漬けて抽出したものを化粧水としたことは知られていまい。 もっとも、効果抜群だと知って売り出そうとしても、「ヘクソカズラ美顔水」の商標や「ヘクソカズラの実」の原料表示では、購入する人があるとは思えないから、永遠に企業化されることはあるまい。

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フキノトウ(春はそこまで・・・)

hukinotouきてみれば 雪消の川べ しろがねの 柳ふくめり 蕗のとうも咲けり       斉藤茂吉

山峡を バス行き去りぬ 蕗のとう   三好達治

フキノトウの和歌・俳句の代表作として、かねがね、上の二つを愛唱しており、民話ではフキの葉の下に棲むというアイヌのコロボックルに心を惹かれる。               hukinotou

フキノトウは漢名で「和款冬花」と言う美しい名前を持ち、たん切り・咳止めに特効があるとされてきたが、山菜としての天婦羅やふき味噌の独特の香りと風味が忘れられない。

寒風の中、いつもの時期に、いつもの場所を覗いたら、フキノトウはきちんと花を咲かせ、「春はそこまで・・・」とささやいているように思われた。暖かい関西のエメラルド色の花も良いが、雪消の八幡平で見た真っ白な花が未だに忘れられない。

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2006年2月 6日 (月)

オオイヌノフグリ(寒暑節を過たず・・・)

ooinunohuguri 「花便り」に、「寒暑節を過つ…」と言う古人の言葉を引用して、世上の混乱と為政者の怠慢を嘆き、節を過たないのは花だけだと書き添えたら、「今年は、近来稀な寒気の影響で、ウメも開かず、メジロもやって来ない」「花も鳥も、節を過っているではないか」と言う厳しいご意見をいただいたので、「いいえ、この通り、野っ原では、オオヌノフグリが可憐な花を咲かせていますよ」とご返事を差し上げた。

「節を過たず…」に咲くところは、あっぱれと褒めてあげたい。                                      ooinunhuguri

蛇足ながら、この花の受粉の仕組みをご報告させていただこう。 オオイヌノフグリは、花の大きさに比べて花柄が細くて長く、蜜を求めて蜂が止まると、重みに耐え兼ねて花が下を向くが、蜂が慌てて花芯にしがみつく時に、雌しべは受粉し、雄しべは花粉を蜂の腹に擦り付ける。 現金なもので、受粉を終わった花に蜂が止まれば、ポロリと落花する。

早春のこの時期は、蜂も少ないので、受粉に成功する可能性は低いが、不幸にも受粉出来なかった花は、夕方花を閉じるときに、両方に開いた雄しべの葯が雌しべを挟み込んで、自家受粉する。 花粉学者の田中肇氏の著書から受け売りさせていただいたが、その巧妙な仕組みを、野原に出掛けて、 じっくりと観察するのも一興と思われる。

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2006年2月 5日 (日)

カンザキアヤメ(寒中にひっそりと咲く花)

kannzakiayame カンザキアヤメの故郷は地中海沿岸で、花の少ない寒中に咲く貴重な植物である。

立春を前に、小春日和が帰ってきたので、カメラを担いで出掛けようとすると、家内が、「こんな寒中に花が咲いているものですか」と言うが、こちらは目算があるものだから、真っ直ぐに目的地に向かうと、果たせるかな、カンザキアヤメは花盛りである。                 

東名高速道路沿いの、小さな寺院と民家の境目の南斜面の日溜りが棲み易いのか、半野生化していて、ayamemoyo 毎年正月前から花をつける。 写真で見る通り、紛れもなくアヤメ属の花だが、残念ながら背が低い。 花の背丈は15cm内外で、25~30cmの緑濃い葉に埋もれて咲くものだから、散歩する人々も見過ごすのだろう、お蔭で盗掘されることもなく、時期が来ればひっそりと咲く。                                  

外側の花弁(実は萼)の根元の「あやめ模様」が鮮やかである。 「あやめ模様」(文目模様とも書く)は、日本が誇るデザインの一つではないだろうか、小粋で清楚で、浴衣や帯など和服の地模様に相応しい。

2月4日付けの朝日新聞は、「花おりおり」でカンザキアヤメをとりあげていたが、私の撮影の方が、僅か2日だけだが早かった。

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カンザキアヤメ(寒中にひっそりと)

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ノボロギク(目立たないけどタフな奴)

noborogiku 節分の寒風の中で、ノボロギクが花を咲かせ、実の散布を始めていた。 ノボロギク(野襤褸菊)と言う冴えない名前を持ち、一向に目立つことのないこの植物が、詳しく観察してみると、実にタフで強かな奴だと知って驚かされる。

秋の終わり頃に、発芽した株は、本葉が4~5枚になるといち早く蕾をつけ、冬の間に、花を咲かせながら成長を続け、正月前後には立派な固体となって、早々に種子の散布を開始する。 虫媒花なのにどうして受粉するのだろうかと言う心配はご無用、昆虫の少ないこの時期には、自家受粉で手軽に種子を作ってしまう方便を身につけている。 肥沃な土地を好んで、果樹園の樹下などに大群落をつくるかと思うと、痩せ地も苦にせず、道端のコンクリートの割れ目、踏み付けが厳しい校庭の隅や民家の庭にも侵入する。抜かれても踏まれても、次から次から芽を出して、直ぐに花を咲かせ、1株が約1,000個の種子を作って撒き散らすというサイクルを、1年中繰り返す辛抱強さと執念深さが、この一見ひ弱わそうに見えるヨーロッパ原産の植物を、寒帯から熱帯まで至る所に進出させた原動力に違いない。               noborogiku

我が国には、明治の初めに渡来して、大正年間には全国に広がり、年がら年中花をつけるところから、農民の間では、「ネンガラソウ」と呼ばれていたと言うから、学者や先生方が名付けたと思われる「ノボロギク」という硬直したネーミングよりも、身近にこの草を観察した庶民の目の確かさと巧まざるユーモアの方が、数段上回っているように思える。

ドイツではカナリアが好んで食べるので「鳥草」と呼んでいるらしい。

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