イヌビワ(花と蜂の不思議な「共生」関係)
イヌビワはイチジクの仲間で、関西なら里山の林縁などで普通に見ることのできる木なので、この写真も、自宅から歩いて3分の毎日放送テレビの構内で撮影したものである。
一見平凡に見えるこの植物が、イヌビワコバチと言う特定の小蜂によってのみ受粉・結実し、イヌビワコバチもまたイヌビワだけを食用とし、その中で一生を過ごすと言う、まさに運命共同体とも言うべき「共生」関係にあること聞いて驚かされるが、その仕組みを詳細に観察して見よう。
① イヌビワは雌雄異株で、花(胞嚢)はイチジクを小さくしたような形をしており、雄花は花 粉のみを生産し、雌の木の花には雌花が一杯詰まっていて、受粉すれば結実する。
② イヌビワコバチは雄花の中で生まれ、蛆から蛹の時期を経て成虫になるが、雄蜂には羽がなくて、一生雄花の中で暮らし、雌蜂は羽を持ち、交尾したのち、雄花の花粉を体につけて外界へ飛び立つ。
③ 雄花に出合った雌蜂は、花に潜り込んで産卵して死ぬが、雌花に入った雌蜂にはとんでもない悲劇が待ちうけている。
④ 雌花の入り口は狭くて、潜り込むときに羽を捥ぎ取られるばかりか、入り込んだ途端に入り口が閉じられて蜂は監禁状態になる。 中には雌しべの花柱が林立していて産卵する場所もないので、蜂はもがき苦しんで死ぬ。 その間にイヌビワは花粉を貰ってやっかり受粉すると言う仕組みになっている。
すなわち、イヌビワはイヌビワコバチの生活を全面的に保障し、イヌビワコバチの雌蜂は死をもって、その恩義に報いると言うことになる。
イチジクの仲間は、すべて特定のコバチと共生関係にあるので、イチジクの果実の中に受粉を完了したイチジクコバチの死骸が残っているのではないかと懸念される向きもあるかと思うが、心配ご無用、日本の寒さではイチジクコバチは生存できないので、品種改良されたイチジクの雌木だけが栽培され、虫のない果実が出荷されているらしい。 しかし、乾燥イチジクを始め輸入されたものには、蜂の死骸があるとか、ないとか…いろいろと姦しい。
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コメント
今晩は、とし爺さん薫君と言います、今まで名前の解らない植物でした、山イチジクと自分で名前を付けて読んでいました。私自身の歳がが解るのですが、子供の頃、山にアケビを取りに行った時、イヌビワが熟して食べた事をが懐かしく思い出します、食当りはしませんでしたが、現在の子供では解りませんが。
投稿: 薫君 | 2006年1月18日 (水) 19時30分