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2005年10月19日 (水)

ユキミバナ(雪見花と言う佳い名の新種)

yukimibana 1,993年に新種の植物が発見されて、ユキミバナ(雪見花)と言う佳い名が付けられた。

福井県の若狭地方と滋賀県の湖北の一部の極く限られた地域に分布し、9月から花を付け始め、名前の通り雪が降るまで咲き続けるが、青紫色で径僅か1・5cmの小さな花は、朝早く開いて、午後には凋む1日花である。

希少種で、我々素人には、詳しい生育地も知らされていなかったので、出会うことは難しいと半ば諦めていyukimibana たが、京都植物園に移植されたものが花を付けたと言う情報を得て、駆けつけカメラに収 めることができた。

見栄えのしない小花に血の道を挙げるなど、我ながら酔狂に思えて、スケールの小さい道楽だと言う思いはあるが、「神は細部に宿りたまうと言う言葉もある」などと開き直って、全く益のない趣味の世界を楽しんでいる。

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2005年10月12日 (水)

ヨメナ(由緒正しい古典的山菜)

yomena ヨメナの古名は「うはぎ」と言い、飛鳥時代に皇后・王族・女官たちが、春ともなれば、競って野に出て「うはぎ」を摘み、野外料理を楽しんだと言うから、まさに古典的山菜だと言って差し支えないだろう。

炊き上げてうすき緑や嫁菜飯 

                                   久女

春の野に煙立つ見ゆ乙女らし 春野のうはぎ摘みて煮るらしも  

          詠み人知らず 万葉集

妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山 野の上のうはぎ過ぎにけらずや      柿本人麻呂                          yomena

私の母方の祖母は、「ヨメナのおひたし」が大の好物で、春になると、「敏郎や、ヨメナを摘んできておくれ…」と催促したものだった。

「ほかの者に頼むと、いろんな草をムチャクチャに摘んでくるが、お前のは違う…」と妙な所で信用があった。

あの独特の香気が忘れられない。   

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2005年10月10日 (月)

アメリカチョウセンアサガオ(要注意外来生物)

tyousennasagao 畑の摘菜と一緒に誤って、この草を食べると、一瞬に目の瞳孔が開く。 その時、普通の蛍光灯の明りが、真っ昼間に裸眼で太陽を見たのと同じ明るさに見えるので、失明する危険性があると言うから恐ろしい。

なにしろ、江戸時代に華岡青洲が我が国最初の麻酔薬を開発する際に、誤って妻女を盲目にしたと言う、札付きのチョウセンアサガオの仲間で、今年施行された外来生物法の「要注意外来生物」にも指定されていると言う物騒な植物なのであtyousennasagao る。                                                     ところが、「妖しいのものや変わったものに惹かれる」という現代の風潮に乗って園芸名「ダツラ」の名前でチョウセンアサガオ属の花の栽培がブームとなり、一般家庭の庭や家庭菜園にまで植えられているので、食害を惹き起こすのではないかと、ハラハラさせられる。 庶民の日常生活を脅かすのは、アスベストや改造エアガンだけではなさそうだ。

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2005年10月 8日 (土)

タラノキ(皆殺しはやめてください)

taranoki 秋、山菜の王様と言われるタラノキには、こんな美しい花が咲きます。花の咲き始めは真っ白ですが、実が熟す頃になると花序全体がピンクに色付いて、まるで珊瑚の樹ように見えます。

山菜ブームで、ドライブウエィやハイキング道のタラノキが、心ない人々の乱獲に遭って、惨憺たる状況にあることをご存知でしょうか。 本来が生命力旺盛な木だから、1番芽を摘まれても、その腋から2番芽・3番芽を出して生き残るのですが、それまで全部摘み取られれば、たまったものでありません。 沿道に立ち枯れたタラノキの行列を見て暗澹とさせられます。 どうか皆殺しだけはやめてください。               taranoki

タラノキは厚生省によって正式に認定された「薬効のある樹木」としても有名です。 知る人ぞ知る糖尿病の妙薬ですが、余り効きすぎて低血圧症を惹き起こす恐れがありますので素人療法には十分注意する必要があると思われます。(陀羅尼介・御嶽百草などには、タラノキの樹皮=惣木が含まれていると聞きました)

食べて良く、薬効も抜群のタラノキを大事にしましょう。

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2005年10月 5日 (水)

アカボノソウ(花色は明け方の空の色)

akebonosou 名前で得をしている花にアケボノソウ・カリガネソウなどがある。

この花のクリーム色掛かった白色を明け方の空の彩りに、花冠の黒紫色の斑点を暁の星に見立てて、この名が付いたといわれているが、一説には、花弁の中央にある二つの黄緑色の蜜腺を明けの明星なぞらえたとも言い、清楚な花を茶花として愛好する人が多い。

センブリに近縁の2年草で、草丈は50cm内外、時に1mに達するものがある。

ほの暗い林縁の谷川の畔などで出合うが、人目を惹くので、「まぁ、可愛い」とばかり、衝動的に折り採る人がいるのだろうか、ハイキング・コースでは、無残にも茎の先端を千切られた株を多く見掛ける。

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2005年10月 3日 (月)

コウホネ(豪華な黄金色の花冠)

kouhone 夏の真っ盛りに、池や湿地の水の中から花茎を擡げて、コウホネが豪華な黄金色に輝く花を咲かせるが、咲き始めの新鮮な花をクローズ・アップして見ると、まるで女王様の王冠に見ええ溜息が出るほど美しい。

写真で見る通り、花冠は四重の構造をしており、真ん中が雌しべで、太い柱頭は放射状に広がり、内から2番目の輪の列は雄しべでやや白っぽい。 一番外側で5枚の花弁のように見えるのは萼で、花弁は目立たず萼に隠れるようにして、その内側にひっそりと一列に並ぶ。                                                   kouhone                                                   

コウホネは水位の変動の少ない古い溜池や沼地・湿地に普通に見ることができたが、水質の汚染でめっきり減った。 白い根茎が泥の中で肥大するものを「白骨」に見立てて「河骨」と呼んだが、漢方でも「川骨=センコツ」と言い、産婦の産後の止血に特効があると言われてきた                                              

京都の巨椋池とその周辺には、花の小さいオグラクコウホネが知られていたが、池が埋め立てられて絶滅の危機に瀕しているらしい。

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ヨシノアザミ(所変われば、アザミもいろいろ)

yosinoazami 日本を大まかに二分するとき、関が原を境に西日本と東日本に分けるが、実際に方言や生活習慣なども大きく異なっており、両者が鮮やかな対比を示すのが面白い。植物も同様に伊吹山辺りを境にして棲み分けているらしい。

このヨシノアザミがその好事例で、分布は滋賀県・福井県(若狭地区)以西と四国の一部に限られ、岐阜県・福井県(若狭地区)以東は東北に分布の中心のあるナンブアザミの勢力圏で、両者が混じる事はないと言う。関東地方にyosinoazami は、トネアザミ(別名タイアザミ)が生えるが、この3種はナンブアザミを母種として本家・分家の関係にあると言われている。

日本に180種あると言われているアザミの中で、特に近畿地方に多いので、花の吉野山に因んだものと勘違いしていたが、岡山県の植物物学者で、この地方の植物の研究に大きな貢献のあった吉野善介氏の業績を顕彰するために、牧野富太郎博士が命名されたと言う曰く因縁があるらしい。

学名も Cirium nipponicum Makino var Yoshinoi と言う。

頭花は細い枝先に総状または穂状花序をなして、疎らに付き、やや小振りの紅紫色の頭花は華奢な感じがするが、京阪神の里山の秋を彩ってくれる貴重な花の一つである。 

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メリケンカルカヤ(雑草にも雑草の芸の面白さ)

merukennkarukaya 北アメリカ原産のイネ科の帰化植物で、渡来したのは昭和15~16年頃だと言われているが、目立つようになったのは戦後で、乾燥した荒地を好み、特に鉄道沿線の周辺では、一時ほど勢いのないセイタカアワダチソウに取って代わる感じで、「新鉄道草」の称号を与えてもよいのではないかと思っている。

わが国には、「刈萱」と優雅な名で総称されるオガルカヤ・メガルカヤと言う在来種があり、ちょうど月見の頃に花穂を出し、料亭などで小粋に活けられているのを見掛けて、感心したことがあったが、メリケンカルカヤのように、どこmerukennkarukaya にでも生えていると、うんざりさせられて、活け花どころか、鑑賞する気にもなれない。

ところが、この草の風情は霜が降りると一変する。

立ち枯れた侭で朱に色付き、夕日を浴びて荒地を染める風景が西部劇を思わせて、もの寂しく美しい。 実際、西部劇で砂の荒野にメリケンカルカヤが一面に生えているスケールの大きい風景をみたことがある。

雑草にも雑草の芸があるところが面白い。

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ツルニンジン(韓国では貴重な薬草)

turunnnjnn 全体のの1/3に当たる東六甲縦走コースを6時間掛けて歩いた。全縦走だとか全縦走マラソンだとか、やたら勢い込んで往復した道だが、当時の印象は案外薄い。しかし、いまこうして親しい仲間と談笑し、路傍の花を愛でながら、ゆっくり歩いてみると、見慣れた風景にもしみじみとした六甲の良さが感じられ、1草1木にも懐かしさが甦る。

山では秋の花が咲き始めて賑やかで、アキノキリンソウ・ヤマシロギク・アキチョウジ・ノコンギク・ヨシノアザミ・コウヤボウキ・リンドウ・ツルリンドウ・ミヤマママコナなど六甲山で親しい花に混じって、ツルニンジンが俯き加減に花を咲かせていた。

韓国の知人から「ツルニンジンは国でトトクと呼ぶ貴重な薬草で、夜店の屋台でも売られています」と教えられたが、今回インターネットで検索してみて、紡錘状に太る根が「四葉参」と呼ばれて朝鮮人参並みの薬効があり、豊富に含まれるサボニンが体脂肪を燃焼させるほか、抗癌剤としても珍重されていると知った。 10年物の根が100g当たり5,000円、20年物では6,000円と聞いて、「掘りあげて韓国へ輸出したら、儲かるだろうな・・・」など、あさましいことを考えて見たが、果たして採算が合うかどうか。

花弁の内側の赤紫色の斑点を爺さんのシミ・ソバカスに見立てた「ジイソブ」(ソブは方言で蕎麦のこと)と言うユーモラスな別名を持ち、同属のバアソブとの対照が面白い。

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2005年10月 1日 (土)

メイゲツソウ(お月見とメイゲツソウ)

onntade9月18日は中秋の名月の日には、人並みに「団子」を食べて、居間に寝そべりながら窓辺に登る月を眺めると言う、いささかだらしない月見を楽しんだ。

名月に因んでメイゲツソウを調べて見たが、定義がはっきりしない。

或る山野草業者に、「厳密には、富士山などに多いイタドリの高山型がオノエイタドリで、その中で特に花の紅色のものをメイゲツソウと言う」と聞かされたことがあるが、図鑑類をあれこれひっくり返して得た結論では、難しく考えることなく紅花のイタドリをメイゲツソウと呼んで差し支えないらしい。       meigetusou

9月初旬に登った木曽御岳山では、7合目から山頂付近に至るまで、子供の背丈から、火山礫の間に僅かに顔を覗かせるような高山植物型のものまで、実に様々な草丈と花色を持ったメイゲツソウ出合うこととができたが、これらの火山にイタドリが多いのは、度重なる火山活動で近くの山から運ばれて定着しつつある高山植物が死滅し、更地と見ればどこにでも進出するパイオニア植物が繁栄しているからだと思われる。

9月20日の奈良県高取城址では、真っ白な花をつけたイタドリの群落の中に、草丈2mになんなんとする真っ赤な花のメイゲツソウが今を盛りとばかり咲いており、平素盆栽で小柄な花をを楽しんでいる身には、逞し過ぎて「これもメイゲツソウなのか」と違和感を覚えるほどだった。                                

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