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2005年8月27日 (土)

タカサゴユリ(子孫繁栄のための「ニッチ戦略」)

takasagoyuri 経済界では、新規市場へ進出する手法の一つに「ニッチ戦略」があり、日本の中小企業の多くがこの戦略をとって今日の繁栄を築いたが、帰化植物のタカサゴユリも、同じ戦略で、わが国に進出し、分布を広げることに成功した典型的な植物である。

タカサゴユリが台湾から渡来したのは、大正12年といわれているが、ながい雌伏期を経たのち、「神武景気」と歩調を合わせるようにして、一挙に勢力を拡大した。その時にとった戦略が「ニッチ戦略」であり、進出した場所が、植物にとってはニッチな宅地や工場用地の石垣であり、高速道路のロード・サイドであった。 元来タカサゴユリは、

① 他のユリが、花を咲かせるまでに数年まやは十数年掛かるのに、タカサゴユリは発芽して1年で開花するなど、世代の交代が早く、繁殖力も旺盛な種である。

② 乾燥と貧栄養の劣悪な環境に極めて強く、石垣やコンクリートの割れ目にも根を下ろして、生き続ける。 本来、長い茎の先端に花をつけるユリ類はは草刈に弱い。草刈機が入らない石垣や高速道路の両サイドなどはタカサゴユリにとって生育適地なのである。

③ タカサゴユリは自家受粉で大量の種子を作り、風に乗せて広い範囲に散布する。ユリの類は、綺麗な花を咲かせることが仇となって、人に採掘されて衰退しているが、タカサゴユリは一挙に沢山の花を咲かせることで、希少価値を解消して盗掘を免れている。

一見意思を持たないように見えるタカサゴユリが、「ニッチ戦略」で繁栄のための拠点を確保し、「大量生産システム」を駆使して、テリトリーを一挙に広げるその英知に、頭の下がる思いがする。

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エノコログサ(その巧妙な生き残り戦略)

enokorogusa 処暑、晩夏の風を受けてエノコログサの穂が靡いている。別名を「ネコジャラシ」と言われる通り、一見可憐な草だが、農耕に携わる者にとっては、抜いても抜いても、次々に芽を出して生えかわり、根絶やしにすることは不可能に近いと言う意味で、厄介な雑草である。

最近、このエノコログサが「アレロバン物資」を持つことが発見されて、この草の子孫繁栄の秘密の一部が解明されたと知ったのでご紹介させて頂こう。

アレロバン物資と言うのは、一種の成長抑制剤で、セイタカアワダチソウが根からこの物資を分泌して、他の草の発芽や生長を抑制することが知られているが、この物質は、諸刃の刃で、自家中毒を惹き起こして、自己や同族の成長も抑制すると言うからややこしい。

エノコログサのアレロバン物資は、次のように作用するらしい。

① エノコログサはパイオニア植物といわれて、造成地や空き地にいち早く進出し、晩夏から初秋に大量の種子を実らせて周りに散布する。

② 翌春、種子のうちの20~30%が、他の草に先駆けて発芽して群落を形成し、群落はアレロバン物資で他の草の進出を阻害するとともに、同族の残りの種子の発芽も阻止する。

③ 発芽を抑制された種子は土中に埋もれて発芽の機会を伺っており、群落が枯死したり、刈られたりすれば、待機中の種子の内の20~30%が発芽して、テリトリーを埋める。

このように、次々に生えかわった同族が、常に自己の のテリトリーを占拠して、他の植物の進出を許さないと言う、経済学者が舌を巻くような巧妙な「生き残り戦略」を駆使して、世界雑草と言われる現在の繁栄を維持しているのである。

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2005年8月13日 (土)

ハクサンチドリ(北では道端の雑草か)

hakusanntidori 八幡平の山頂で、駐車場脇に咲くハクサンチドリを撮影していたら、通り掛かりに、「北ではハクサンチドリは道端の雑草ですよ」と言い捨てて立ち去った人がいたが、言わでものことと苦々しく、同じ花好きでも、希少価値のある花には目の色を変えて、日頃見慣れた花は見向きもしない方との付き合いは、こちらの方からご免こうむりたいと、思い出しては腹を立てている。                      hakusanntidori

早池峰山の山麓河原坊から小田越に至る道路脇には、ハクサンチドリとヤマオダマキが研を競うように美しい花を咲かせていたが、ハクサンチドリの大きいものは草丈が30cmを超え、千鳥型の数十個の花を総状花序につけて、堂々と咲く有様は、雑草どころか一種の風格さえ感じられ、日本の山を飾る代表的な蘭と言って差し支えないだろう。

ハクサンチドリの花色は基本的には紅紫色だが、、しばしば白色または薄桃色のものが混じっており、園芸業界では「シロバナハクサンチドリ」と呼んでいるようだ。

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オオカメノキ(別名をムシカリと言う)

ookameoki オオカメノキの名前は、葉の形が亀の甲羅に似ているからとも、昔神事に使われて「大神の木」と言われていたのが訛ったとも言うが、前者の方が尤もらしい。 別名をムシカリと呼ぶのは、この葉が虫に食われ易いところから名付けられたからと言う。            ookameniki

初夏の山を歩いていて、ほの暗い樹下の道や下草の上に、白い蝶が舞い下りたように見える落花を見つけて顔を上げると、頭上にオオカメノキがある。 ヤブデマリやヤマアジサイに似ているが、枝が横に広がること、葉の先端が亀の尻尾のように尖るなどの特徴があるので、見誤ることはない。 六甲山系だは表六甲には見当たらず、裏六甲に多い。

焼石岳(東北)の登山口で、朝日に照らされて浮かび上がるように咲くオオカメノキを見付けて思わずシャッターを切ったが、こんな地味な花をコツコツ撮り貯めるのも山を歩く楽しみの一つである。

葉が紅葉して、実が赤く熟れる秋のオオカメノキとの出合いもまた、 捨て難い。

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コンフリー(万能の薬草転じていまは毒草)

konnhuri 日本の秘境と言われる岩手県のタイマグラの畑の脇でも、コンフリーが可憐な花を咲かせていたので撮影して帰った。

この草は、かっての一時期「不老長寿の妙薬」として脚光を浴び、生食以外にも青汁・ハーブ茶・サブリメントに加工されて健康増進剤として持て囃されていたが、平成16年に厚生省食品安全委員会によって、食べ続けると肝硬変・肝不全を惹き起こす恐れがあるとして、突如、販売の禁止ならびに生食の自粛を勧告されている問題の植物である。

昭和40年前後に、当時ソ連領だったコーカサス地方で長寿村が発見されて世界中の注目を浴びたが、その長寿の秘訣が

① ヨーグルトの摂取 ② コンフリーの生食

にあるとされ、コンフリーが一躍脚光を浴びて全世界に広がった。私も山野草料理を売り物にする民宿で勧められて「コンフリーの天婦羅」なるものを試食した記憶があるが、特に美味しかったという印象も持っていない。

毒の正体は、ピロリチジンと言う「フキノトウ」にも含まれるというアルカロイドで、厚生省の通達によって、青汁やサブリメント業界は自粛に踏み切ったらしいが、この種の情報を民間に徹底することは至難の業で、一時期のブームは沈静化したとはいえ、一部には信仰にも似た支持者がいて愛用・愛飲していると言うし、青刈りして家畜の生食用に活発に利用さてているらしい。「食べられる山野草」や「植物図鑑」類の記述の訂正が完了するには相当の期間を必要とするのではないだろうか。

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