ラショウモンカズラ(切り落とされた鬼の片腕)
平成17年5月14日、世界文化遺産に指定された高野町石道180丁(22km)を7時間掛けて踏破した。高野山の開祖弘法大師が母の住む九度山の慈尊院を訪ねて、夜毎往復したと伝えられる道で、「高野7口」の一つとして和歌山から高野山に参る人々が歩いた遍路道でもある。一丁毎に、道標の町石が建てられているところから、「町石道」といわれるが、そのスタート地点に当たる「1町石」の辺りでラショウモンカズラが大きな群落を作って咲いているのが印象に残った。
「なぜ、ラショウモンカズラと言うの」と聞かれる事が多い。やや煩雑になるが、その由来を探ると、平安時代中期に大江山の鬼退治で名高い源頼光の四天王の一人渡辺綱が、夜な夜な羅生門に出没する鬼を捕らえてその腕を切り落とした。鬼は悔しがって「その腕を7日間お前に預けるが、必ず取り戻す」と言って逃げた。果たせるかな7日目に渡辺綱の伯母と称する老婆が訪ねてきたので、その腕を見せたところ、たちまち鬼の正体を現し、己の腕を取り返して逃げ去ったと言う。
写真で見る通り、暗紫色の花筒の先に白い毛が生えた形が、羅生門で切り落とされた鬼の腕に見えなくもないが、余程故事に詳しい人でも、すんなりと納得するのは難しいのではないだろうか。暗い樹下で咲くこのシソ科中最大の花を、不気味と見るか、美しいと見るかは、その人の感性に委ねるよりほかあるまい。
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