2013年12月18日 (水)

サザンカ・ツバキ(小鳥の世界の食料事情?)

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「今日も来なかったね」
「どうしたんでしょう・・・」「すっかりお見限りだね」
最近、我が家のティタイムに交わされる夫婦の会話である。
千里丘に家を建てたときに、「万博公園に近いから、小鳥達が立ち寄ってくれるに違いない」との願いと期待を込めて、狭い庭に早咲きのツバキとサザンカを植え込んだ作戦が功を奏し、11月の終わりに花が咲き揃うやいなや、先ずメジロが押し寄せてきて、花から花へ飛び交いながら蜜を吸う。それを追掛けてヒユがやってきてメジロを追い払って花弁と蕊(しべ)を貪り食べる。鳥の匂いが染みつくと、それに誘われるようにシジュウカラ・ヤマガラ・エナガ・ウグイス、時には茶色の羽根に白い紋付姿のジョウビタキまでが挨拶に来てくれる。
朝日俳壇で見付けた句、
 ヒヨがきたメジロがきたと老夫婦
を口遊みながら、お茶を飲むと言うのが小市民的な楽しみだった。
ところが、花の方は異常と思える程咲き誇っているのに、今年は小鳥達が姿を見せてくれない。余程里山に餌が豊富なのか、小鳥の世界の食糧事情は伺う由もないが、一体どうなっているのだろうか。

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2013年12月10日 (火)

チシマキキョウ(きっかけは、この1ショット)

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つい最近、当年104歳で史上最高年齢の詩人にして童謡作詞家のまど・みちおの「人生処方詩集」の中で「たまいれ」と言う素晴らしい1篇を見付けた。
  たった 一ど
  はいったたまを

  こころが なんども
  おもいだす

  五ども十ども
  はいったみたい

一切の説明は不要。
82年生きてきて、なに一つ功なく、誇るべき成果を持たない私でも、こんな体験ならいくつか挙げることができそうだ。 例えば上の写真。 こ生意気にも、「風景や花の映像なら、心の印画紙に焼き付けて置きさえすればよい・・・」などと嘯いていた私が、節を曲げてカメラを持ち歩き始めた頃の初期の作品である。
ピンボケなどミスショットの屑の中から拾い上げた先輩が、「これはいい・・・」と言って、仲間内の作品展にだしてくださったのがきっかけで、この世界にのめり込んだ。
それ以来、もう一度玉が入るときの心のときめきを求めて、シャッターを押し続けているのだが・・・。

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2013年11月30日 (土)

ヒイラギ(「柊」と言う素晴らしい漢字)

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初冬の今頃、「目に付く花は・・・」と問われれば、「サザンカ」と答えるが、「好きな花は・・・」と聞かれれば、ヒイラギ・チャノキ・ヤツデ・ビワなどが心に浮かぶ。寒風の下、凛とした佇まいを見せて咲く白い小花は、それぞれに風情があって好ましいが、中でも、ヒイラギは、濃い緑の葉と葉の間から覗く純白の花との対比が素晴らしく、私としてはイの一番に推したい花である。 俳味も抜群と思い俳句歳時記(平凡社版)を繰ってみたが、案に相違して突出した名句が見当たらないのでがっかりさせられた。 その中では、
  柊の葉の間より花こぼれ     高浜虚子
  柊の数えようなき花の数     横山迪子
  柊の花香や咲きし日を知らず  大橋伊佐子
  柊の花の終れは知らぬまま   稲畑汀子
がヒイラギの生態をよく表しているように思えるので選んでみた。

もう一つ、「柊」という漢字が素晴らしい。
その由来を調べて見たが、ヒイラギ自体が日本と台湾だけに分布していることもあって、中国には「柊」に該当する木はないらしい。古事記には「比々羅木」の名で出てくるし、平安時代には、既に厄や穢れを払う木とされていたと言うから、その時代に中国の文献から「柊」の字を見付けて、ヒイラギの表記に借用したのではないかと思われる。「椿」も中国ではチャンチンと言う木に使われていたのに、強引にツバキに流用した手口に似ているが、「柊」「椿」ともに、これしかないと思えるほどの素晴らしい漢字表記である。

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2013年11月15日 (金)

オグラセンノウ(希少植物探訪記)

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オグラセンノウは絶滅危惧種(EN)に指定されているが、町で見るのはそんなに難しくはない。江戸時代以来好事家によって栽培されており、今でもインターネットで検索すれば、1株500円程度で容易に手に入れることが出来る。しかし野生種を探すのは並大抵ではない。 元来、日本が大陸と陸続きだった頃、東アジアに広く分布していたが、日本海によって隔てられたのちは、九州と中国地方の山間部の湿原で生き残ってるものの、生育地の環境の変化で生息数を大幅に減らしていると聞く。
私も一時期希少植物の探訪に血の道を挙げ、この花もターゲットの一つに選んでかなり真剣に追掛けて来たが、努力の割に成果は少なかった。 その経緯を略記すると、
① 熊本県阿蘇高原・・・花時に2回探訪  ××
② 大分県九重高原・・・坊がつる湿原など丹念に歩いたが ×
③ 広島県神石郡・比婆郡帝釈中国山脈の湿原)・・・ 未探訪
④ 岡山県新見市鯉ヶ窪湿原・・・3回訪ねて2回花に出会う 〇〇
⑤ 兵庫県赤穂郡の山間部・・・7年に亘り意欲的に探したが ×
⑥ 大阪府能勢町歌垣山内・・・周辺を丹念に歩いたが  ×
(注)⑤近くの佐用町に拠点を設営し7年間探したが発見できず
   ⑥1990年版大阪府植物目録に「1987年の土木工事により絶滅」とある
オグラセンオウの名は京都の小倉山に因むと言うし、岡山県の山間部の集落では盆花にしていたと言う記録もあるので、昔はかなり広範囲に分布していたらしい。
その日本の山野草切っての名花が無惨に衰退して行くのを見るのはなんとも辛い。

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2013年11月14日 (木)

ハナノキ(木と友達になりましょう)

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観察会などで、花の話をする時に、「木と友達になりましょう」と言い添える事にしています。
友の数は多ければ多いほどいい。
この物言わぬ友は、懐が深くて、こちらが訪ねさえすればいつでも暖かく迎えてくれるところが嬉しい。
「どんな木がよいか」と聞かれれば、「人間の友達選びと同じです」と答えましょう。昔人間の私などは、与謝野鉄幹の歌を思い出して、
「妻を娶らば才たけて、見目麗しく情あり、友を選ばば書を読みて、六分の侠気四分の熱」と言いたいところだが、いかにも古過ぎる。今の方なら、「フィーリングが合う」とか「空気が読める奴」などと言うことのなるのでしょうか。
私の年来の友をご紹介させていただきます。
名前は「ハナノキ」、幹回り15cmの若木で、自宅から歩いて5分のマンションの小公園の片隅に生えています。園芸業者がウリハダカエデを植える際に間違ったらしく、たった1本だけ肩をすぼめるように立っていますが、国の天然記念物の名木「ハナノキ」に相違ありません。
ここに家を建てて引っ越してきた直後に見付けたので、もう30年を越える付き合いになります。
普段はウリハダカエデに埋もれているこの木が異彩を放つのは紅葉の季節です。日頃目立つことのない地味な少女が、突然真紅のドレスに着かえてプリマドンナ変身し、黄葉するウリハダカエデをバックに、すっくと立つのですから、拍手喝采・・・と言いたいところですが、悲しいかな小公園の片隅では、人は気付くこともなく通り過ぎてしまいます。 だから、せめてもの友達甲斐に、この孤独な友の晴れ姿をカメラに収めることにしています。


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2013年11月13日 (水)

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2013年11月 2日 (土)

キバナオドリコソウ(日欧の花の悪名比較)

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日本にも、聞くにたえないような悪名を持つ花がある。
 シビトバナ(死人花)・テクサレ(手腐れ) ヒガンバナの俗名
 ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)
 ヘクソカズラ(屁糞かずら)
が、三大悪名と言えるだろうが、ヨーロッパにも、これらに優るとも劣らない凄い名前を持つ野草があることを知ったので、報告させていただこう。 上の写真で見る通りの可憐なキバナオドリコソウ(学名:ラミウム・ガレオブドロン)である。 我が国のオドリコソウの近縁種で、渡来しているのは黄花の「ガレオブドロン」とピンクの花を咲かせる「マクラータ」の2種で、我が国の風土にもよく馴染み、暑さ寒さにも強いので、欧風花壇のグランドカバーとして重用されているらしい。
しかし、その名前が凄い。
学名は Lamium galeobdolon だが、ラミウムのLamiaは人を喰うと言う伝説上の怪物で、ガレオブドロンを直訳すれば「イタチの臭い」で、「イタチの最後っ屁に似た悪臭を持つ怪物」ともなれば、ヘクソカズラなどものの数ではない。 英名は Dead nettle は「死人草」でヒガンバナの俗名そっくりである。
なぜこんなに忌み嫌われるのだろうか。 
我が国では「可愛い踊り子」と見る花が、ヨーロッパでは「異形の者(怪物)」に見え、葉の斑や固有の匂いも不気味に思えるらしい。 日本で茶花として人気のあるホトトギスの花の斑が欧米人には蝦蟇ガエルの肌に見えて Toed lillies と呼ぶのと同じらしいが、いずれも感性の問題であって、是非を云々することはできない。

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2013年10月29日 (火)

アキノエノコログサ(帰って来たウルトラ雑草)

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25・10・25付の「アキノエノコログサ(気になるエノコログサ属の盛衰)」で、平和に共存していたエノコログサ属の中で、アキノエノコログサが勢いを増し、一党支配体制を確立しつつあり、その主因は、気候の温暖化によるとしたが、もう一つ気になっていたのが、数年前から在来種よりも背丈や花穂のサイズが一回りも二回りも大きいウルトラ・アキノエノコログサとも言うべき個体が多くなっていることである。戦後の生活環境と食生活の変化が日本人の平均身長を伸ばしたと同じ現象かも知れない。
最近、その疑問の一端が解明できたのでご報告させていただこう。
(資料:日本帰化植物写真図鑑P-131 畜産草地研究所 渡辺修氏「帰ってきたウルトラ雑草」より)
アキノエノコログサが、中国から輸入された食用キビに混じってアメリカへ渡ったのが、1930年前後、アメリカの風土気候にマッチしたのか、中部から東部のコーンベルト地帯に急速に広まり、あっという間にトウモロコシ・大豆畑の代表的な雑草となり、旺盛な繁殖力の加えて、最近では除草剤に耐性のあるものまで現れ、農業関係者に脅威を与えつつあるという。
アメリカに定住したアキノエノコログサの最大の特徴はサイズの巨大化にある。
① 在来種   草丈50~100cm 花穂の長さ 5~12cm
② アメリカ種 草丈3m        花穂の長さ 在来種の2~3倍
この巨大なアキノエノコログサが輸入穀物と共に帰っているらしい。
日本に戻って徐々に元のサイズに戻るのか、それともウルトラ雑草として蔓延るのか・・・、当分の間は目が離せない。 、

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2013年10月25日 (金)

アキノエノコログサ(気になるエノコログサ属の盛衰)

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アキノエノコログサの花穂が目立つ。
クローズアップレンズで覗いて見ると、花穂の禾(のぎ)が輝いて息を飲むほど美しい。
かしこまってエノコログサと呼ぶよりは、幼い頃から呼び習わした「猫じゃらし」の方が親しみを感じる身近な雑草で、可愛い花穂に惹かれて、通り掛かりに摘み採って帰り、一輪挿しに投げ入れて楽しんだ方も多いのではないだろうか。悪童の頃に、ちょっと気になる女の子の後ろから忍び寄り、うなじ辺りをコチョコチョとくすぐって、悲鳴を挙げさせた甘酸っぱい思い出もある。 
このエノコログサ属には色々な品種がある。花穂を真っ直ぐに立てるのが普通のエノコログサで、花穂が紫色のムラサキエノコログサ、夕日を浴びると禾(のぎ)が黄金色に輝くキンエノコログサ、これらより一回り大きくて長い花穂が垂れるアキノエノコログサである。これらは田畑やその周辺、都会の空き地などに平和に棲み分けているかに見えたが、20~30年前から一寸した異変が生じた。東南アジアの出自で、史前帰化植物として我が国に定住したと言われているアキノエノコログサが均衡を破って徐々に勢力を拡大し始めたのである。
エノコログサの衰退とアキノエノコログサの勢力拡大を最初に気付かれたのは、長い間大本教花明山植物園長をつとめられた津軽俊介氏ではないかと思う。当時、文献を拝見して、京都の植物界の権威の目が、こんなありふれた雑草にまで注がれていることに感激したことを思い出す。 
アキノエノコログサは地球規模の温暖化に後押しされて、見る見るうちに勢力を拡大し、今やエノコログサ属の中で一党支配体制を築きつつあるように思える。
最近の新聞紙上で「ことごとに勝たせ過ぎたと反省し」と言う川柳を見付けて、我が意を得た思いがしたが、人間の世界であれ、植物の世界であれ、一党支配は好ましくはない。
   
  草いろいろおのおの花の手柄かな  芭蕉
そんな世界であって欲しい。

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2013年10月22日 (火)

ホソバヒメミソハギ(細身の美女が田の害草)

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はじめて、アメリカ原産のこの草に出会ったときには、「さすがにミソハギ科だけあって、細身で姿が良く、4弁花が可愛いので、定住して田の畔を賑わしてくれることだろう」なんて、甘い期待を抱いて観察してきたが、とんでもない。昨今の異常高温に後押しされたこともあるだろうが、ひょろひょろと細っぽい外観からは想像もできないほど強烈な繁殖力を発揮して、「あれよ、あれよ」と言っている間に西日本一円を席巻して関東に進出し、国立環境研究所などが、稲作と競合する強害雑草として、駆除方法を研究する事態に至ったと言う。
茎の径は5mm内外だが、背丈は1mに達し、イネの穂を越えることもある。葉脇の節毎に5~6個の花が着き、下から咲き上がって20段を超えるケースも稀でない。花は律儀に実り、1株に100個以上の実が成る勘定になる。 実には0・4mmの種子がぎっしりと詰まっているので、1株で30~40万個が出来、散布された種子は水に流されて広がり、日照さえ十分ならば100%発芽すると言うから怖ろしい。
休耕田が、一年でこの草に覆われる光景をご覧になった方も多いのではないだろうか。
九州方面には同属のナンゴクヒメミソハギが帰化していると聞くが、京阪神地区には、ホソバヒメミソハギが多い。


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